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尿中マイクロRNAは−80℃で長期間安定 長期保存後の尿検体一括解析について科学的妥当性を裏付け 〜研究成果が学術雑誌「Discover Applied Sciences」に掲載〜

研究
2026.10.06

 バイオAIスタートアップのCraif株式会社(所在地:東京都新宿区、代表取締役CEO:小野瀨 隆一、以下Craif)の研究チームは、尿中の細胞外小胞に含まれるマイクロRNA(以下「尿中マイクロRNA」)について、尿検体を−80℃で長期間保存した後も、その量や発現プロファイルが安定して維持されることを明らかにしました。本研究成果は、2026年9月18日に、Springer Natureが発行する学術雑誌「Discover Applied Sciences」に掲載されました。

■ 発表のポイント

  1. 同一の尿検体を各形態で長期間保存後に評価:健康成人7名から採取した同一の尿検体を、尿、尿中細胞外小胞(uEV)、RNAおよびcDNAの各形態で保存し、次世代シーケンシングによりmiRNAの量と発現プロファイルを経時的に評価しました。尿は−80℃で最長12か月、uEVとRNAは−80℃、cDNAは−20℃で最長3か月保存しました。
  2. 尿の状態で長期間保存してもマイクロRNA発現プロファイルを維持:尿検体を−80℃で保存した結果、保存期間によるマイクロRNA量の明確な変化は認められず、個人ごとのmiRNA発現プロファイルも12か月にわたり維持されました。
  3. uEVおよびcDNAも3か月間、マイクロRNAプロファイルを維持:尿検体から調製したuEV、RNAおよびcDNAは、保存期間によるマイクロRNA量の明確な変化は認められず、個人ごとのmiRNA発現プロファイルも3か月にわたり維持されました。
  4. RNAの状態で保存した場合は一部のマイクロRNAに経時的な減少:RNAの状態で保存した場合には、一部のマイクロRNAで経時的な減少が認められ、特にGC(グアニン・シトシン)含量の低いマイクロRNAが影響を受けやすい可能性が示されました。
  5. 凍結融解による影響は認められない:尿、uEV、RNAおよびcDNAのいずれについても、1回の凍結融解によるマイクロRNA量や全体的な発現プロファイルに明確な変化は認められませんでした。
  6. 尿中マイクロRNAを用いた研究・臨床応用を支える基盤的成果:尿検体の長期保存安定性が確認され、Craifが臨床研究で実施している複数検体の一括測定について、その科学的根拠を補強する成果が得られました。これにより、大規模研究の効率化や、尿中miRNA検査の安定的な運用へのさらなる貢献が期待されます。

■ 本研究の背景

 マイクロRNAの一部は、細胞から放出される細胞外小胞に内包された状態で血液や尿などの体液中に存在し、がんをはじめとするさまざまな疾患の状態を反映するバイオマーカーとして注目されています。

 なかでも尿は、採血を必要とせず、身体への負担が少ない方法で繰り返し採取できるため、疾患の早期発見や状態把握に用いる検体として大きな可能性があります。Craifでは、尿中の細胞外小胞を効率的に回収し、そこに含まれるmiRNAを網羅的に解析する技術の研究開発を進めてきました。

 一方、尿中マイクロRNAを研究や検査に活用するためには、採取した検体をどの程度の期間保存できるか、また凍結融解によって測定結果が変化しないかを明らかにする必要があります。長期間の保存が可能であれば、収集した検体をまとめて解析できるため、大規模研究の効率化や、測定工程・コストの最適化につながります。

 これまで、尿検体の保存が個別のmiRNAに与える影響を評価した研究はありましたが、次世代シーケンシングを用いて尿中マイクロRNAの全体的な発現プロファイルを長期間かつ前向きに評価した報告は限られていました。

 そこで本研究では、尿、尿中細胞外小胞、RNAおよびcDNAという複数の保存段階について、保存期間および凍結融解がマイクロRNAの量や発現プロファイルに与える影響を体系的に評価しました(図1)。

(図1)尿中マイクロRNAの保存安定性を評価した本研究の概要

■ 用語説明

マイクロRNA:細胞内に存在する非常に小さなRNA分子で、遺伝子の働きを調節する役割を持っています。がん細胞ではマイクロRNAの種類や量が変化するため、病気の早期発見や診断の手がかりとなります。

細胞外小胞:細胞が分泌する小さな袋状の粒子で、体内の情報伝達に使われます。細胞外小胞にはマイクロRNAなどの物質が含まれており、がんの診断に役立つ重要な情報を運んでいます。

機械学習:AI(人工知能)技術の一種で、大量のデータをもとに自らパターンを学習し、予測や分類を行います。本研究では、マイクロRNAのデータを用いて肺がんの有無を高精度に判定するために用いられました。

■ 論文情報

掲載誌:Discover Applied Sciences
タイトル:Systematic evaluation of microRNA stability during long term storage of urine
著者:Atsushi Satomura1,2, Yoriko Ando1, Motoki Mikami1,2, Yuki Ichikawa1,2
所属:

  1. Craif Inc., Nagoya, Japan
  2. Institute of Innovation for Future Society, Nagoya University, Nagoya, Japan

公開日:2026年9月18日
DOI:10.1007/s42452-026-09526-9

■ 研究費

先進的医療機器・システム等開発プロジェクト(国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)):課題番号JP24he2302007

■ Craifについて

 Craif(クライフ)はがん早期発見に取り組む2018年創業のバイオAIスタートアップです。尿をはじめとする体液から、DNAやマイクロRNAなど多様なバイオマーカーを高精度に検出する独自の解析技術基盤「NANO IP®(NANO Intelligence Platform)」とAI技術を融合し、がんの超早期発見・早期治療・早期復帰を可能にする革新的な検査を開発しています。バイオテクノロジーとAIの力を社会に広く届けることで、当社のビジョンである「人々が天寿を全うする社会の実現」を推進します。

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