がん検査
乳がん検診は何歳から?初期検査・精密検査の種類、費用を解説
- 公開日: 1/19/2023
- |
- 最終更新日: 9/13/2024
先生
そのお友達はセルフチェックで早期発見できたのですね。それですぐに病院に行ったのが素晴らしいと思います。大丈夫だろうと放ったらかしにする人も多いですから。
質問者
私も定期的に検査受けないといけないと思いながらも中々行動に移せていないです。ただ乳がんになった友達の話を聞くと本当に怖いなって思います……。
乳がんは女性がかかるがんの中で1番多く、2019年の罹患数(新たに乳がんと診断された人の数)は97,142人、2020年の死亡者数は14,650人です。(*1)
出典:
質問者
女性では乳がんにかかる人が断トツで1位ですね。だけど乳がんはがん死亡数の1位ではないんですね。
先生
その通りです。乳がんにかかる人は多いけど、治療によって大部分が治せるようになってきてるのがポイントです。だからといって、油断しないでくださいね。発見が遅れると命の危険がありますから。
今や女性の9人に1人がかかると言われている乳がん。(*2)
決して他人事とは言えないでしょう。ただ、定期的にセルフチェックを実施し、乳がんの検査を受けていれば早期発見につながります。
この記事のサマリーは以下の通りです。詳しく見ていきましょう。
- 乳がんは女性の9人に1人がかかると言われているが、早期発見すれば治せるようになってきている
- 40歳以降の女性は2年に1度マンモグラフィ検査を受けることが推奨されている。併せて毎月セルフチェックを行う
- 20代、30代では危険因子を多く持つ場合、定期的に乳腺エコー検査を受けた方がと良い
- 乳がんのスクリーニング検査には血液検査や尿検査(マイシグナル)がある
- 乳がん検査には「自由診療で人間ドックや病院で受ける」「自治体の制度を利用する」「職場の制度を利用する」「保険診療で受ける」の4つのパターンがある
- 「要精密検査=乳がん」ではないので不安になる必要はない
- 要精密検査となった場合は乳腺MRIやCT、細胞診、組織診などを受けることになる
- 精密検査の結果が異なる場合は他の検査を実施するか、再検査することになる
- 乳がんの治療では手術が基本。必要に応じて放射線治療や薬物療法が実施される
- 放射線治療や薬物療法等、乳がんの治療を受けると自然妊娠が難しくなってしまうリスクがある
*1,2
- 参照: がん情報サービス「最新がん統計」
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目次
乳がんとは?症状・特徴
乳がんは、母乳をつくる小葉(しょうよう)と、母乳を運ぶ管である乳管(にゅうかん)から発生するがんです。小葉と乳管を合わせて乳腺と呼びます。
乳がんは胸のしこりや乳頭あたりの湿疹やただれ、乳頭からの異常分泌、乳房皮膚のくぼみなどの症状がきっかけとなり、受診して見つかることが多いと言われています。一方で無症状の場合は、乳がん検査をきっかけに発見されるケースが増えてきています。
特に、乳がんにかかりやすい人(リスク因子を多く持つ人)は注意が必要です。
乳がんのリスク因子として以下が挙げられます。
- 初経年齢が平均より低い(日本人女性の平均初経年齢:12歳)(*3)
- 閉経年齢が平均より高い(日本人女性の平均閉経年齢:50歳)(*3)
- 出産歴がない
- 初産年齢が高高い
- 授乳歴がない
- 閉経後の肥満
- 飲酒習慣(週に5日以上飲む)(*4)
- 一親等の乳がんの家族歴
- 良性乳腺疾患(乳腺にできる良性のしこりや炎症など)にかかったことがある
乳がんの発生・増殖には女性ホルモンの一つであるエストロゲンが関与していることが分かっています。そのため乳がんのリスク因子にはエストロゲンの分泌量に関わるものが多いのです。 ただ、エストロゲンは女性らしさをつくるホルモンであり、生殖器官の発育・維持に欠かせない重要な役割を担っています。
質問者
うっ。私もいくつか該当します……。私の友達はステージⅡだったって話していましたが、乳がんのステージはどう分かれるのですか?
先生
乳がんのステージ(がんの進行具合を表す指標)は以下のように分類されています。
特徴 | 症状 | |
0期 | 非浸潤がん(がん細胞が乳管や小葉にとどまっている状態)、あるいはパジェット病(乳がんが乳頭の皮膚に進展しているもの)できわめて早期のがん | 非浸潤がんは自覚症状が無いことが多いパジェット病では乳頭が赤くただれる |
Ⅰ期 | がんの大きさが2cm以下で、リンパ節や他の臓器に転移していない | 人によって以下のような症状が見られる ・しこりがある ・乳頭から黒・茶・赤色などの分泌物が出る ・乳頭に湿疹やただれがある ・乳頭が陥没する ・乳房が、えくぼのように凹んだり、逆に盛り上がったりする |
ⅡA期 | がんの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節に転移がある状態。または、がんの大きさが2~5cmで、わきの下のリンパ節や他の臓器に転移がない状態 | 同上 |
ⅡB期 | がんの大きさが2~5cmで、わきの下のリンパ節に転移がある状態。または、がんの大きさが5cmを超え、わきの下のリンパ節や他の臓器に転移がない状態 | 同上 |
ⅢA期 | がんの大きさが5cm以下で、わきの下のリンパ節に転移しリンパ節が互いにくっついている状態。または、わきの下のリンパ節には転移はないが、胸骨の内側のリンパ節に転移がある。もしくはがんの大きさが5cmを超え、わきの下または胸骨の内側のリンパ節に転移がある | 同上 |
ⅢB期 | がんの大きさやリンパ節への転移の有無に関わらず、しこりが胸壁に固定されていたり、がんが皮膚にでたり、崩れたり、むくんでいるような状態。しこりのない炎症性乳がんも含まれる | 同上 |
ⅢC期 | がんの大きさに関わらず、わきの下のリンパ節と胸骨の内側のリンパ節の両方に転移がある、または鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある | 同上 |
Ⅳ期 | 他の離れた臓器へ遠隔転移(骨・肺・肝臓・脳など)がある | 同上 |
質問者
乳がんの死亡数は他のがんに比べると少ないって話ですが死亡率はどのくらいですか?
先生
5年相対生存率を見てみましょう。これは、乳がんと診断された人の5年後の生存率と日本人全体の5年後の生存率の比率のことです。乳がんは92.3%と他のがんと比べても高いです。(*5)
質問者
なるほど。乳がんと診断されても、5年後に生きている可能性は十分にありますね。なんか乳がんにかかった芸能人のニュースとか見て、すぐに亡くなってしまうのかと思っていました。
先生
それは誤解です。例えば見つかった時点でステージⅣまで進行していたら難しいかもしれないですが、早期発見ができれば乳がんは治る時代です。
*3
*5
- 参照: がん情報サービス「最新がん統計」
乳がん検査は何歳から?年齢ごとのリスクと検査方法・頻度・費用
実際に乳がん検査は何歳から受け始めるべきなのでしょうか。
それは、その人の乳がん発症リスクに応じて推奨される年齢や頻度が異なります。
また、検査を受ける年齢によって検査方法や保険適用の有無も変わってきます。
ここでは年代別に分けて詳しく解説していきます。
30代までの検査費用は自己負担?20~30代と乳がん検査
質問者
乳がん検査はやっぱりなるべく早く20代から受けた方がいいのですか?
先生
まずは年齢ごとの罹患率を見てみましょう。
質問者
30代から40代での上がり幅がすごいですね……。乳がん検査ってマンモグラフィですよね?30過ぎたら定期的にマンモグラフィ受けないといけないのですか?
先生
いえ、国が推奨しているのは40歳から2年に1回の問診(月経、妊娠、自覚症状、病歴などの質問)とマンモグラフィ検査です。
マンモグラフィ検査では放射線の一種、X線を浴びるため被ばくします。また、乳腺濃度の濃い若い世代ではマンモグラフィを受けても乳がんを見落としてしまうケースが多いと言われています。
そのため国としては40代からのマンモグラフィ検査を推奨しています。
20代30代の場合、「何か症状がある」「リスク因子を多く持つ」場合は、乳がん検査を積極的に受けましょう。
20代30代の乳がん検査は乳腺エコー(超音波)検査が一般的です。超音波を当てて反射波を画像化して乳房内を調べます。被ばくはないので妊娠中でも検査可能です。
質問者
でも乳がん検査って自己負担ですよね?結構高そうです。
先生
そうですね。完全に自己負担(自由診療)の場合、病院で受ける場合は診察料とか初診料がかかるから2,3万円程度かかります。人間ドックのオプションだとエコー検査、マンモグラフィ検査ともそれぞれ4,5千円で受けられます。
また、自治体によっては30代から乳腺エコー検査を受けられるところがあります。指定の医療機関に行けば無料~3,000円程度でエコーによる乳がん検査が受けられます。
その他、多くの会社で健康保険組合の制度を使って乳がん検診が無料あるいは千円程度で受けられます。
一方で、「しこりを見つけた」など何か症状があれば病院でも自由診療にはならず保険適用で検査が受けられます。
つまり、
- 完全自己負担(人間ドックのオプションや病院で検査を受ける):費用は病院であれば2,3万円、人間ドックのオプションなら4,5千円程度
- 自治体の制度を利用する:費用は無料~3千円程度
- 職場の制度を利用する:費用は無料あるいは千円程度
- 保険診療で受ける:3割負担で6~9千円程度
の4つのパターンがあります。
40代からの検査費用は無料?40~50代と乳がん検査
前述の通り、40歳からは2年に1回マンモグラフィ検査と問診を受けられます。これは各自治体が実施しており、費用は無料~3000円程度とバラバラです。また、国が40歳以上の一定年齢を対象に配布している「乳がん検診無料クーポン」もあります。
質問者
国や自治体の検診で乳腺エコー検査は選択できないのでしょうか?
先生
エコー検査を希望する場合は基本的に自費になります。国はマンモグラフィ検査を推奨しているためです。というのも現時点で、検査して乳がんの死亡率を減らすことができる科学的根拠があるのはマンモグラフィ検査のみなのです(*6)。ただ、より精度を上げるならマンモグラフィ検査とエコー検査の両方をするのがいいって言われています。
質問者
そうなんですね。2年に1度の検診なら、マンモグラフィとエコー検査を交互に毎年受けるのが良さそうです。
*6
- 参照: 日本対がん協会「よくある質問」
75歳を超えると不要?60代、70代、80代と乳がん検査
質問者
乳がん検診は何歳まで受け続けるのでしょうか?さっきの罹患率のグラフを見ていると60代はまだまだ高いけど70代後半から下がってきていますが….
先生
いいところに気づきましたね!乳がん検診の年齢の上限は特に設けられていないんです。でもご指摘の通りで75歳程度を上限とするのが妥当と考えられています。(*7)
マンモグラフィ検査は死亡率を下げる唯一の検査と述べましたが、そのエビデンスがあるのは75歳まで。
そのため、日本における乳がん検診の推奨年齢は40~75歳と考えられています。(*8)
*7,8
乳がん検査の流れ・全体像
ここからは乳がん検査の流れを具体的に紹介しましょう。
まずは医療機関で問診・マンモグラフィ、40歳未満の場合はエコー検査を受け、乳がんの可能性がないかどうかをスクリーニングします。乳がんの疑いがある場合は精密検査を受けることになります。
質問者
マンモグラフィを受けて、いきなりがんの診断はできないのですか?
先生
実はマンモグラフィの検査で腫瘍を見つけられても、基本的にそれが良性か悪性かまで判別するのは難しいのです。そのためマンモグラフィの検査結果のみで「乳がん」といきなり診断できす、再検査や精密検査を受けることになります。
乳がんの確定診断については後程詳しく解説します。
乳がん検査・検診は何科で行う?
質問者
乳がん検査はかかりつけ医のところで受けられるのですか?それとも婦人科に行くべきでしょうか?
先生
女性特有の病気だから婦人科って思われるのですが、乳がん検査を受けるにはマンモグラフィや超音波の機器を備えた病院に行かなければいけません。乳腺外科や外科を受診してください。
男性もマンモグラフィ・乳がん検査はできる?
質問者
男性も乳がんになることあると聞きました。男性でも同じように検査を受けられるのですか?
先生
男性の乳がんは少ないけど、乳がん全体の約1%を占めているとも言われています。(*9)
特に、性別に関係なく乳がんを発症した身内がいる男性は乳がんを発症するリスクが2倍になると言われています。(*10)
男性も女性と同様にマンモグラフィやエコー検査を受けられるので、発症リスクの高い人は定期的に乳腺科や外科で検査を受けた方がいいでしょう。「しこりがある」など何か症状がある場合は保険適用で検査が受けられます。
*9,10
今すぐできる、乳がんセルフチェックとは?
質問者
国が推奨している2年に1回の乳がん検査って頻度として少ない気がするけど本当に大丈夫なのですか?
先生
2年に1度の乳がん検査じゃ少ないって思いますよね。だから毎月、乳がんのセルフチェックを行うことが大切です。
鏡の前に立ちましょう。両手を頭の後ろに当てて、くぼみ・ふくらみ・ただれ・変色・ひきつれがないかを確認します。ワキの下もチェックしてください。
続いてしこりのチェックです。ひらがなの「の」の字を書くように指先で軽くなでるようにさわってみましょう。
指先で乳頭の根元を軽くつまんで血の混じったような分泌物が出ないか確認してください。
最後に横になって確認しましょう。仰向けに寝転んで乳房を触ってしこりの有無をチェックします。
毎月日にちを決めてこのようなセルフチェックを行いましょう。男性も同様にセルフチェックすることをおすすめします。
痛くない検査も、乳がんの初期検査の種類と費用を徹底解説
質問者
私の母は50歳過ぎてるけど乳がん検診行ったことないって言っていました……。痛いし恥ずかしいし嫌だそうです。
先生
実際にはそういう女性も多いです。ただ、乳がんを早期発見するには、初期検査を定期的に受けることが重要です。乳がんの初期検査は視診触診・マンモグラフィや乳腺エコー検査と色々あるので迷いやすいかもしれません。
それぞれの特徴やメリット・デメリットについて、詳しく紹介していきましょう。
メリット | デメリット | おすすめな人 | |
マンモグラフィ検査 (X線検査) | ・石灰化をとらえやすい ・検査を受けることで死亡率が下がるという科学的根拠がある |
・被ばくする ・痛みを伴うことがある ・妊娠中、授乳中は受けられない |
40歳以上の女性 |
乳腺エコー検査 (乳腺超音波) |
・乳腺密度が高くても観察可能 ・妊娠中、授乳中でも受けられる ・しこりが良性か悪性か診断しやすい |
・石灰化の評価が難しい ・エコーを行う人の技量に依存する |
・妊婦、授乳婦 ・乳腺密度の高い人 |
また、マンモグラフィと乳腺エコー検査の所要時間、費用と保険適用条件は下記のとおりです。
所要時間 | 痛み | 費用 (自由診療) | 費用 (保険適用) | 保険適用条件 | |
マンモグラフィ検査 (X線検査) | 15分前後 | 有 | 2,3万円 | 6~9千円(3割負担) | しこりや乳頭からの分泌物など乳がんを疑う症状がある場合 |
乳腺エコー検査 (乳腺超音波) |
10~20分程度 | 無 | 2,3万円 | 6~9千円(3割負担) | しこりや乳頭からの分泌物など乳がんを疑う症状がある場合 |
- ※記載費用は当社(Craif)が独自で調べたものになります。実際の費用は各医療機関にお問い合わせください。
それでは、それぞれの乳がんの初期検査の詳細を見ていきます。
視診・触診
乳がんの初期検査として以前は視診・触診が行われていましたが、現在は「偽陽性(陽性判断され、精密検査を受けたものの、がんでなかった場合)が多い」との理由で推奨されていません。そのため、乳がん検診から視診・触診を廃止する自治体が増えています。
質問者
恥ずかしいのが嫌で乳がん検診を避けていた女性には朗報ですね。
マンモグラフィ検査(X線検査)
マンモグラフィは乳房専用のX線撮影のこと。乳房を圧迫し乳腺を広げた状態で、1方向あるいは2方向から撮影します。この圧迫時に痛みを伴うことがあります。
乳がん患者の一部の人では、乳腺の中にカルシウムが沈着することで生じる「石灰化」が見られます。マンモグラフィは、触っても分からないような石灰化のある乳がんや小さなしこりの発見に適しています。
一方で、乳腺密度の高い若い年代では乳がんの判別が難しい場合があります。
マンモグラフィ検査は病院だけでなく、人間ドックのオプションとして4,5千円払えば組み込むことが可能です。入院は必要なく、検査時間も15分程度です。
一方で、「しこりが触れる」「乳頭から出血がある」など既に何らかの自覚症状がある場合は、保険適用となります。マンモグラフィ検査についてはこちらのマンモグラフィは痛い?検査前の注意点から結果の見方まで解説にて詳しく説明しています。
乳腺超音波検査(乳腺エコー)
乳腺エコー検査は超音波をあてて乳房の内部から戻ってくる反射波を画像化する検査のことです。触っても分からないしこりを見つけたり、しこりが悪性かどうかを判断したりするために用いられています。
エコー検査は乳腺密度が高くても内部を観察できることから、若い年代の乳がん検診に導入されています。
エコー検査の場合、身体への負担がなく、検査時間も短いため気軽に受けられます。エコー検査もマンモグラフィ検査と同様に4,5千円払えば人間ドックのオプションとして追加することが可能です。自覚症状がある場合は保険適用となります。
乳腺エコーについては乳がん検診の乳腺エコーとは?マンモグラフィとの違いと結果の見方にて詳しく説明しています。
乳がん検査:マンモグラフィと乳腺エコーの違いと使い分け
20代30代の若い年代ではエコー検査、40代以降ではマンモグラフィ検査あるいはエコーとマンモグラフィ検査の併用が推奨されています。
ただ、乳腺密度の個人差によって使い分けは変わってきます。精度を上げるのであれば、併用するのが良いでしょう。
乳がんの検査もできる?スクリーニング検査キットとは
前述したマンモグラフィやエコー検査以外にも乳がんのスクリーニング(がんの可能性がある人をふるい分ける)が手軽にできるスクリーニング検査キットも存在します。
質問者
え~そんな検査キットが存在するのですか?
先生
自宅で簡単にできるから便利です。恥ずかしい思いもしなくてすみますよ。
ここでは自宅で行える血液検査・尿検査のキットについて紹介します。
腫瘍マーカー(血液検査)
がんの存在によって血液中に増える特有の物質があります。その特有の物質を「腫瘍マーカー」と呼び、腫瘍マーカーが異常値を示す場合にがんの可能性が考えられます。ただ、腫瘍マーカーは基礎疾患や体調などで異常値を示すことがあり、さらに早期の小さな乳がんでは数値に影響を与えないため、早期発見には向いていないと言われています。
質問者
でも自宅で受けられるんですよね?
先生
はい、自宅で血液を1滴採取するだけです。乳がん以外にも子宮頸がんや卵巣がんを調べる腫瘍マーカー検査もあります。
尿検査
質問者
腫瘍マーカー検査は早期発見向けではないって話だったけど他に自宅で行えて精度の高い検査はないのですか?
先生
それならマイシグナルがおすすめです。自宅で採取した尿を提出するだけです。
マイシグナルでは尿中に存在する「マイクロRNA」という物質を分析して乳がんの可能性を評価します。マイクロRNAとは細胞間コミュニケーションに関わる物質であり、健常な人にもがんの人にも体内に存在します。
ただ、がんの種類によってその発現パターンが異なることがわかっています。マイシグナルでは、このマイクロRNAの発現パターンの違いを分析してがんの種類ごとにリスクを評価。
マイクロRNAは早期のがんであっても尿中に検出されるため、早期発見に向いています。
また、乳がんだけでなく、大腸がん、肺がん、胃がんから膵臓がん、卵巣がんに至るまで幅広く検出可能です。
マイシグナルについてはこちらの「がん検査との関係とマイシグナル®の仕組み」で詳しく解説しています。
先生
ただし、マイシグナルの結果「乳がんのリスクが高い」という判定が出ても、乳がんと診断されたわけではない点に注意です。結果を持ってまずは乳腺科を受診してください。
乳がん検査・検診結果の見方と注意点
質問者
腫瘍マーカー検査やマイシグナルの場合は結果に応じて乳腺科を受診すればいいんですよね。では、乳がん検診を受けて乳がんの疑いが出たらどうなるのですか?
先生
乳がんの疑いがある場合は、「要精密検査」になります。
質問者
うわ~なんか怖いですね。「要精密検査」って結果が出て実際に乳がんと診断される確率ってどれくらいなのですか?
先生
要精密検査という結果が戻ってきたら不安になりますよね。でも要精密検査と言われて実際に乳がんと診断される確率は、分類されるカテゴリーによって異なります。
ここからは、マンモグラフィと乳腺エコーのカテゴリー分類について解説します。
マンモグラフィ検査結果の見方のポイント
マンモグラフィの検査結果は、乳がんの可能性に応じて以下のように5つのカテゴリーに分けられます。これらは撮影された画像を元に腫瘤(白い塊状の影で良性と悪性の場合がある)や石灰化、その他の異常所見を探して判定します。
カテゴリー分類 | 説明 |
カテゴリー1 (異常なし) | 異常所見なし |
カテゴリー2 (良性) | 異常所見はあるが、明らかに良性と診断できる |
カテゴリー3 (良性だが悪性を否定できない) | 異常所見があり、良性の可能性が高いものの悪性を否定できないので要精密検査 |
カテゴリー4 (悪性の疑い) | 異常所見があり、悪性の可能性が高いので早急に要精密検査 |
カテゴリー5 (悪性) | 異常所見があり、ほぼ悪性と考えられるので早急に要精密検査 |
患者さんのための乳がん診療ガイドライン2014年版によると、
- カテゴリー3に分類された場合、がんの確率は5-10%程度。
- カテゴリー4に分類された場合、がんの確率は30-50%程度。
- カテゴリー5に分類された場合、がんの確率はほぼ100%。
カテゴリー3・4・5に分類された場合は精密検査を実施し、「悪性かどうか」「がんの場所」「がんの種類」「転移の有無」などを調べます。
質問者
カテゴリー3と5では重みが全然違いますね……。
乳腺エコー検査結果の見方のポイント
乳腺エコー検査では、
乳腺のう胞 | 乳管内部に水分がたまる状態。一般的に良性であることが多い。 |
乳頭腫 | 乳管の表面の細胞が盛り上がって増殖するもの。良性の腫瘍。 |
乳腺繊維腺腫 | 30代の女性に多い良性の腫瘍。 |
や、マンモグラフィと同様に腫瘤や石灰化の有無などを調べます。
乳腺エコー検査も同様に5つのカテゴリーに分けられています。
カテゴリー分類 | 説明 |
カテゴリー1 | 異常所見なし |
カテゴリー2 | 所見があるが精検不要、明らかな良性 |
カテゴリー3 | 良性、しかし、悪性を否定できず |
カテゴリー4 | 悪性の疑い |
カテゴリー5 | 悪性 |
カテゴリー0 | 判定不能な場合とする |
カテゴリー3,4,5は要精密検査となります。カテゴリー0は装置の不良や患者さんの状態、エコーを行う人の技量による再検査を指します。
乳がんの再検査・精密検査の種類・費用・痛み
質問者
再検査や精密検査になった場合はどんなことをするのでしょうか?
先生
精密検査では一つの検査ではなく複数の検査法で身体全体をよく調べます。もう一度、マンモグラフィや乳腺エコー検査を受けることもあります。
どのような検査を受けるかは、あなたの乳がん検診の結果を見て、医師が判断します。
ここでは要精密検査となった場合の検査の種類・費用・痛みについて説明します。
なお、費用については要精密検査となった場合は保険が適用されるので3割負担以下になると考えましょう。
特徴 | 痛み | 費用(3割負担の場合) | |
乳腺MRI | 乳房全体のがんの広がり具合がわかる | 無 | 1万円前後 |
CT | 全身のがんの転移が調べられる | 無 | 1万円前後 |
細胞診 | 良性か悪性か判断できる | 有 | 1万円未満 |
組織診 | 細胞診で判断が難しい場合においても、良性か悪性か判別可能 | 麻酔 | 1万円前後 |
- ※記載費用は当社(Craif)が独自で調べたものになります。実際の費用は各医療機関にお問い合わせください。
乳腺MRI
MRIでは身体に電磁波を当てて内部を画像化します。放射線は使用しないので被ばくもなく、痛みもありません。また、マンモグラフィや乳腺エコー検査よりも精度が高いと言われています。
ただ、検査時間は20分程度と長めです。費用は3割負担で1万円前後。
今までの乳腺MRIは事前に造影剤を点滴してから検査を行うものが主流でした。しかし、最近は技術革新により造影剤点滴が不要な「ドゥイブスサーチ」「無痛MRI」も登場しており、より体に優しい乳腺MRIの選択肢もあります。
CT
CTはマンモグラフィと同様、X線を使用して身体を輪切りにした画像が得られます。乳房内だけでなく、転移の有無など全身を調べることができます。
痛みはありませんが、放射線を利用するので被ばくします。検査時間は10分程度。費用は3割負担で1万円前後です。
CTもMRIもがんの広がり具合を調べるのに適しています。
細胞診 (穿刺吸引細胞診)
しこりが良性か悪性かどうか最終的な判断をするのに用いられ、しこりに直接細い針を刺して細胞をとります。採取した細胞を顕微鏡で観察します。
細胞診では麻酔をかけずに針を刺すので痛みを伴いますが、身体への負担はありません。細胞診で良性か悪性か判断できず診断が難しい場合に組織診を行います。
組織診 #1 – 針生検 (CNB)
組織診では細胞診より太い針を用いて、しこりの組織の一部を採取します。針が太くなるので組織診の場合は麻酔を使います。
組織診 #2 – 吸引式乳房組織生検 (マンモトーム)
マンモトームではより多くの組織を採取するために吸引を用います。針生検よりも確実な診断ができます。
組織診 #3 – 外科的生検
外科的生検では手術によって組織を取り出します。身体への負担が大きいので細胞診や針生検で診断が難しい場合に外科的生検が行われます。
乳がんの細胞診と組織診の結果が違う場合は?
質問者
細胞診と組織診で結果が異なることもあるのですか?
先生
あります。細胞診で良性と考えられるが念のため組織診をして「悪性」という結果が出ることがあります。その逆のパターンも同様です。
一般的に細胞診より組織診の方が調べられる細胞の量が多いので正確です。ただ、組織診を行っても悪性かどうか判定が難しいこともあり、このような場合はもう一度組織診をするか、診断と治療を兼ねて手術を行い切除するかの選択になります。
また、細胞診とマンモグラフィや乳腺エコー検査で乳がんの診断が異なることもあります。この場合は組織診を行って確かめます。
質問者
これだけいろんな検査があって、医療の技術が進歩していても乳がんの診断って難しいんですね。
先生
特に早期の小さなしこりは細胞レベルで確認しないと良性か悪性か見分けられないのです。
精密検査の結果、乳がんと診断されたら?
乳がんの確定診断が出たら、まずは医師と共に治療計画を立てます。必要であればさらに精密検査を受けることもあります。
基本的にはまず手術でがんを取り除いて、その後薬物療法や放射線治療を開始します。また、手術前に薬物療法を行ってがんを小さくしてから手術を行うこともあります。
質問者
何で手術後に放射線治療や薬物療法を開始するのですか?手術でがんは取り除けるんじゃないでしょうか?
先生
実は手術で取り除けるのは肉眼で確認できるがんのみです。非常に小さながんが残っている場合、再発したり転移したりする可能性があります。
術後の放射線治療や薬物療法は手術で切除できずに残ったがん細胞を死滅させる、あるいは増殖を抑えるために行います。
質問者
乳がんの治療を受けると妊娠機能に影響はありますか?
先生
放射線治療や薬物療法によって卵巣機能が低下したり、女性ホルモンの分泌が低下したりします。そのため、残念ながら自然妊娠が難しくなってしまうリスクがあります。がんのステージにもよるけど、治療を進めながら妊娠機能を維持する選択肢もあるから、医師と相談して決めていくことになります。
また、乳がんの手術では乳房を失うことで精神的なダメージを受ける女性も少なくありません。ただ、近年乳房の再建術は向上しており、術後も生活の質を下げることなく暮らしていけるようになってきています。
まとめ、乳がん早期発見のためにできること
ここまでをまとめましょう。
- 乳がんは女性の9人に1人がかかると言われているが、早期発見すれば治せるようになってきている
- 40歳以降の女性は2年に1度マンモグラフィ検査を受けることが推奨されている。併せて毎月セルフチェックを行う
- 20代、30代では危険因子を多く持つ場合、定期的に乳腺エコー検査を受けた方がと良い
- 乳がんのスクリーニング検査には血液検査や尿検査(マイシグナル)がある
- 乳がん検査には「自由診療で人間ドックや病院で受ける」「自治体の制度を利用する」「職場の制度を利用する」「保険診療で受ける」の4つのパターンがある
- 「要精密検査=乳がん」ではないので不安になる必要はない
- 要精密検査となった場合は乳腺MRIやCT、細胞診、組織診などを受けることになる
- 精密検査の結果が異なる場合は他の検査を実施するか、再検査することになる
- 乳がんの治療では手術が基本。必要に応じて放射線治療や薬物療法が実施される
- 放射線治療や薬物療法等、乳がんの治療を受けると自然妊娠が難しくなってしまうリスクがある
乳がんの検査には様々な種類があることがわかってもらえたと思います。それぞれに長所・短所があり、あなたの年齢・身体の状態やしこりの種類などによってどの検査が適しているのかが変わってきます。
一つ言えるのは乳がんを早期発見するための「完璧な検査」は無いということ。まずはスクリーニング検査で乳がんの可能性を洗い出し、必要に応じて精密検査を受けていくことになります。
質問者
身体の中にある小さながんを見つけるのって本当に難しいんですね。
先生
そうですね。だから定期的に乳がんの検査を受けること、セルフチェックをすることが大切ですね。
2年に1度の乳がん検診以外にもマイシグナルを定期的に受けるのが安心です。また40歳未満で乳がんの危険因子を多く持つ場合もマイシグナルなら自宅で簡単に検査が受けられるからおすすめです。是非チェックしてみてください。
- ※本記事に記載されている費用は当社(Craif)が独自で調べたものになります。実際の費用は各医療機関にお問い合わせください。
この記事の著者
太田知見
医学修士・薬剤師・メディカルライター
神戸大学医学研究科を卒業後、大手化粧品会社の研究開発部に勤務。その後、臨床薬剤師の経験を積み海外へ移住。現在はメディカルライターとして製薬会社やバイオベンチャー企業のライティング業に従事している。
この記事の監修者
宗田聡
医学博士・産業医・茨城県立医療大学客員教授・東京慈恵会医科大学講師(非常勤)
筑波大学産婦人科講師を経て、米国ボストンのNew England Medica Center(NEMC)に留学し出生前診断(遺伝子関連)の研究やWomen’s Healthに関わる。産婦人科専門医・臨床遺伝専門医。日本周産期メンタルヘルス学会評議員、東京産科婦人科学会評議員、産科医療補償制度原因分析委員会委員など
質問者
最近、私の友達に乳がんが見つかって。転移前だったから本当に良かったんですが、もう少し遅れていたら大変だったみたいです。その子はたまたま胸にしこりを見つけて。本人も大丈夫だろうって思ったけど念のためにって病院に行ったみたいです。