研究
がん検査
マイシグナル
肺がんの早期発見 — 最新研究からわかった、尿検査の新たな可能性
- 公開日: 5/26/2026
- |
- 最終更新日: 5/27/2026

マイシグナルの検査の裏側では、日々、研究チームによるエビデンスの構築が進んでいます。
今回はその中でも肺がんに関する研究成果をお伝えします。
肺がんに関する研究は2020年に始まり、2024年には日本肺癌学会にて研究成果を発表、2025年には世界肺癌学会にてステージ0という非常に早い段階での発見・治療につながった事例も報告してきました。
そしてこの度、肺がんに関する研究が、世界的な権威を持つ科学誌『Nature』の系列誌である『npj Precision Oncology』に正式な論文として掲載されました。
学術誌への掲載は、いわばその領域の専門家に「この研究は信頼に足る」とお墨付きをもらったようなもの。マイシグナルの肺がん検出に関するエビデンスが、また一段と確かなものになりました。
本コラムでは、この研究で明らかになったことをわかりやすくご紹介します。
目次
肺がんは「見つけた時期」で、生存率が大きく変わる
そもそもなぜ肺がんの研究に力を入れているのか。
それは、肺がんが日本におけるがん死亡数 第1位であり、早期発見の難しさが長年の課題とされてきたがんだからです。
最大の問題は、初期の段階ではほとんど症状が現れないこと。咳や息切れといった自覚症状が出て医療機関を受診したときには、すでに進行した状態で見つかるケースが少なくありません。
しかし裏を返せば、早い段階で見つけることさえできれば、未来は大きく変わります。
ステージIで発見された場合の5年生存率は約80%以上。治療の選択肢も広がり、身体への負担が少ない方法を選べる可能性も高まります。
一方、進行してから見つかった場合の5年生存率は大幅に低下してしまいます。
だからこそ、「自覚症状がないうちに見つける手段」が、肺がん対策では何より重要です。
しかし、一般的な血液中の腫瘍マーカー(CEAやCYFRA21-1)は、診断の補助や治療効果の確認には用いられるものの、感度に限界があるため早期発見には向いていないのが実情です。
「もっと早い段階で、もっと手軽にがんのサインを捉えられないか」——この課題に対し、私たちが着目したのが「尿中のマイクロRNA」でした。
尿中マイクロRNA検査で、早期肺がんを約9割の精度で検出
がん細胞を含む体内の細胞は、自らの情報を詰め込んだ極小のカプセル(細胞外小胞)を体内に放出しています。このカプセルの中には「マイクロRNA」と呼ばれるメッセージ物質が含まれており、がん細胞では特徴的なパターンを持っています。カプセルは血液を巡り、やがて腎臓を経て尿の中にも現れます。
つまり尿には、がん細胞が発する”サイン”が含まれているのです。
ただし、尿中にはノイズとなる物質も多く含まれるため、マイクロRNAだけを正確に読み取ることは技術的に容易ではありませんでした。この課題を解決したのが、尿から細胞外小胞を高精度に濃縮・単離して解析する独自の技術です。
4医療機関・約500名が参加した大規模研究

今回の研究は、東京慈恵会医科大学・市立東大阪医療センターなど4つの医療機関が参加し、肺がん患者278名と非がん者213名、合計491名の尿サンプルを解析した大規模な共同研究です。
検証の結果、早期の肺がん(ステージ0/I)においても**感度88%・特異度87%**を達成しました。
- 感度88%:実際に肺がんがある方のうち、約9割を正しく「陽性」と判定できる
- 特異度87%:がんでない方のうち、約9割を正しく「陰性」と判定できる
早期肺がんという最も見つけることが難しい段階で、これほどの精度が出たことは大きな意味を持ちます。
さらに、この結果は年齢・性別・BMI・喫煙歴といった背景の違いに左右されないことも確認されており、幅広い方に対して安定した精度が期待できることも分かりました。
早期発見だけではない — 再発モニタリングへの新たな可能性
今回の研究ではもうひとつ、重要な発見がありました。手術後の「再発モニタリング」「再発リスク予測」への応用可能性です。
肺がんの手術を受けた患者さんにとって、「再発するかもしれない」という不安は大きいものです。研究チームが手術前後の尿サンプル100ペアを比較したところ、次のことがわかりました。
1.手術前に高い値を示していたマイクロRNAの一部が、がんの切除後に低下する
2.再発した患者さんでは、一度低下したマイクロRNAが再び上昇する傾向がある
3.さらに、術前の尿データから「再発しやすいかどうか」を予測できる可能性も示された
つまり、定期的に尿検査を受けることで再発の兆候をいち早くとらえ、また術後のフォローアップを一人ひとりに合わせて調整できる可能性があるのです。
自宅で尿を採取するだけで経過を見守れるとすれば、通院負担の軽減にもつながります。
この再発モニタリングについては現時点では研究段階であり、さらなる研究を進めています。しかし、「早期発見」「再発モニタリング」「再発リスク予測」という肺がん診療の複数場面を、ひとつの尿検査でカバーできる可能性を示した初めての研究として、大きな意義を持っています。

私たちが「科学的根拠」にこだわる理由
がんという命に関わる領域のサービスを提供する以上、私たちは常に極めて高い正確性と信頼性を追求する責任があります。だからこそ、根幹となる科学的根拠の構築に妥協することなく取り組んでいます。
今回の論文掲載のように、複数の医療機関と共同で大規模な研究を行い、その成果を国際学術誌に投稿し、専門家の審査を経て受理される——こうしたプロセスを一つひとつ踏んでいくことが、検査の信頼性を裏付けていくことだと考えています。肺がんに関する研究は、今後もさらに対象を広げながら継続していきます。
マイシグナルはこれからも、確かなエビデンスの蓄積と技術革新を通じて、がんの早期発見に貢献できる検査であり続けることを目指してまいります。
論文情報 掲載誌:npj Precision Oncology
タイトル:A Noninvasive Urinary MicroRNA-Based Assay for Early Detection of Lung Cancer and Its Potential Application to Prognosis and Recurrence Monitoring: a case–control study
この記事をシェア
この記事の監修者

名古屋大学 未来社会創造機構 客員准教授、博士(薬学)、薬剤師
東京大学大学院 薬学系研究科にてケミカルバイオロジーを専攻し博士号(薬学)を取得。研究活動に並行してGlobal Healthのプロジェクトにも従事。幼少期をオランダで過ごした海外経験と技術バックグラウンドを活かし、米国のNPOにてザンビア等の開発途上国への医療テクノロジー導入も支援。大学院修了後、2013年にバイエル薬品に入社。オンコロジーや眼科領域事業でMR、マーケティングの経験を積んだ後、経営企画や全社プロジェクトのPMO等、幅広い業務をリードした。 同社を退職後、2019年1月Craif株式会社に参画。
カテゴリから探す
キーワードから探す







