がん検査
前立腺がんの症状とは?似た疾患との違いやPSAとの関係について解説
- 公開日: 8/25/2025
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- 最終更新日: 8/25/2025

排尿の回数が増えた、夜中に何度もトイレに起きる、残尿感がある…。
年齢とともに訪れる身体の変化かもしれませんが、それが「前立腺がんのサイン」だったというケースも少なくありません。
本記事では、前立腺がんの症状や他の病気との違い、PSAとの関係などをわかりやすく解説します。
「症状があるけど病院に行くのは不安」「がんかもしれない…」と悩む方に向けて、客観的な判断材料で安心につながる選択肢もご紹介します。
目次
前立腺がんとは

前立腺がんとは、男性特有の臓器である「前立腺」に発生するがんを指します。前立腺は膀胱の下に位置し、精液の一部をつくったり、排尿機能をコントロールしたりする役割があります。
前立腺がんは日本で患者数が年々増加しており、男性におけるがん罹患数の第1位です。
進行のスピードは他のがんと比較してゆるやかですが、自覚できないまま進行してしまうことが多く、早期発見が難しいのが特徴です。
しかし早期に発見できれば、手術や放射線治療による治療効果が期待できます。*国立がん研究センター がん情報サービス 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)2021年
前立腺がんは初期症状が現れにくい
前立腺がんは、早期の段階では自覚できる症状がほとんどないのが大きな特徴です。
これは、前立腺がんの約70%が「辺縁領域」と呼ばれる尿道から離れた場所に発生するため、排尿に影響が出にくいことが理由のひとつです。
そのため、がんが小さいうちは痛みや違和感をおぼえにくく、日常生活に支障をきたすような変化もほとんどありません。
気づいたときには排尿のしづらさや血尿、腰や背中の痛みといった症状が現れ、そのときにはすでに進行している可能性もあります。
前立腺がんを早期に発見するためには、症状がないからといって安心せず、定期的な検診や検査を受けることが大切です。
前立腺がんの進行に伴って現れる症状
前立腺がんが進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 排尿時の違和感
- 頻尿・夜間頻尿
- 残尿感
- 血尿や血精液
- 背中や腰の痛み
前立腺がんに対して不安を抱いている方は、あてはまる症状がないかチェックしてみてください。
排尿時の違和感・頻尿・夜間頻尿・残尿感
前立腺がんの進行に伴い現れやすいのが、排尿に関する症状です。
がんが大きくなるにつれて尿道を圧迫し、以下のような症状が現れることがあります。
- 尿が出にくい
- 尿の回数が増える
- 尿が出きってない感じがする
- 尿を我慢できない
- 尿が出なくなる
これらの排尿トラブルは、前立腺がんが尿道を圧迫することで起こります。ただし、同じような症状は他の疾患でもみられるため、必ずしもがんに直結するわけではありません。
しかし、症状が続いたり徐々に悪化したりする場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
*東京女子医科大学病院 泌尿器科腎臓病総合医療センター 前立腺がん
血尿・血精液
前立腺がんの症状のひとつとして、尿や精液に血が混じることがあります。
前立腺がんが進行して尿道や膀胱、前立腺周囲の血管を傷つけることで出血し、血尿や血精液が現れるのです。
血尿は肉眼で赤みがはっきりと確認できる場合もあれば、目に見えないほど微量で健診や尿検査によってはじめて発見されるケースもあります。
血尿や血精液は前立腺がんに特有の症状ではなく、他の病気でも起こりますが、いずれにしても体からの重要なサインです。
少しでも血が混じっていると感じた場合には、できるだけ早めに医療機関を受診し、前立腺がんを含めた精密検査を受けるようにしましょう。
背中や腰の痛み
前立腺がんの症状のひとつとして、背中や腰の痛みが現れることがあります。
前立腺がんは骨へ転移しやすい特徴があり、慢性的に痛みが続く場合には、骨転移のサインである可能性があります。
転移が起こると痛みを感じるほかに、神経を圧迫してしびれを伴うこともあるでしょう。がんによる骨破壊が進むと、骨折につながる危険性も高まります。
腰や背中の痛みが長引いたり次第に強くなったりする場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
前立腺がんと症状が似ている疾患
前立腺がんと間違いやすいものとして、以下のような疾患があげられます。
- 前立腺肥大症
- 膀胱炎
- 尿路結石
これらの疾患と前立腺がんの症状の違いを知っておきましょう。
前立腺肥大症
前立腺肥大症は、加齢とともに前立腺が大きくなり、尿道を圧迫することで排尿に関する症状を引き起こします。
とくに50歳以上の男性に多く、排尿の勢いが弱まる・夜間に何度もトイレに行く・残尿感があるといった症状が現れます。
前立腺肥大症と前立腺がんは症状が似ていますが、前立腺がんでは尿に血が混じることがある点が大きな違いです。
*名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室 前立腺肥大症
膀胱炎
膀胱炎は膀胱の内側に炎症が起こる病気で、多くは細菌感染によって発症します。
主な症状として、排尿時の痛み・残尿感・血尿などがあり、前立腺がんと似ている点もあります。ただし、膀胱炎では排尿時に痛みを伴うことが多いのに対し、前立腺がんでは痛みを伴いにくいのが特徴です。
膀胱炎は抗菌薬で改善することが多いですが、症状が繰り返し現れる場合は前立腺がんなど別の病気の可能性もあります。
尿路結石
尿路結石は、腎臓から尿管・膀胱・尿道までの尿の通り道に石ができる病気です。
とくに結石が尿管に発生した場合は、腰や脇腹に突然激しい痛みを感じることがあります。尿路の粘膜が傷つくため、血尿が現れるのも特徴です。
これらの症状は前立腺がんと似ていますが、前立腺がんでは痛みを伴わない血尿が現れやすい点が異なります。
尿路結石は若い世代から中高年まで幅広く発症する一方、前立腺がんは主に50歳以上の男性に多いという年齢層の違いもあります。
*広島大学 腎泌尿器科学 尿路結石症
*独立行政法人国立病院機構 京都医療センター
前立腺がんの腫瘍マーカー「PSA」と症状の関係
前立腺がんの早期発見に役立つのが、腫瘍マーカー@https://misignal.jp/article/tumor-markerのひとつである「PSA(前立腺特異抗原)」です。
PSAは、前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパク質です。前立腺がんの進行に伴って値が上昇する傾向があるため、症状が現れる前にリスクを知る手がかりとなります。
ただし、前立腺肥大症や前立腺炎などでも上昇する場合があるため、PSAの値が高いからといって必ずしもがんがあるとは限りません。
それでもPSA検査は、症状がない段階で前立腺がんを発見する有効な手段のひとつです。とくに50歳以上の方や家族に既往歴がある40歳以上の方は、症状がなくても定期的にPSA検査をすることをおすすめします。
*東京医科大学病院 市民公開講座 PSA(前立腺特異抗原)が高いと言われたら
前立腺がんになりやすい人は?リスクを高める要因
前立腺がんのリスクを高める主な要因には、以下のようなものがあります。
- 加齢
- 家族歴
とくに加齢は最大のリスク因子であり、50代から罹患率は急激に上昇し、70代でピークを迎えます。
遺伝的な背景も大きく、とくに父親や兄弟に前立腺がんを患った方がいる場合は、一般の男性よりも発症リスクが約2倍高くなるといわれています。
また、欧米型の高脂肪食や喫煙が前立腺がんの発症に関与している可能性も指摘されていますが、その因果関係についてはまだ明確に解明されていません。
*国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)(2021年)
*国立がん研究センター がん情報サービス 前立腺がん 予防・検診
前立腺がんは進行前に見つけることが大切
前立腺がんは、初期の段階ではほとんど自覚症状がなく、気づかないうちに進行してしまうケースも少なくありません。しかし、早期に発見できた場合に加え、近くの組織に広がっている場合でも生存率は高いため、前立腺がんは他のがんと比較しても予後が良いがんといえます。
以下は、前立腺がんにおける進行度別の5年相対生存率です。
進行度 | 5年相対生存率 |
限局 | 100% |
領域 | 99.2% |
遠隔 | 53.4% |
がんが前立腺内や周辺の組織、リンパ節にとどまっている場合は、治療によってほとんどの方が長期的に良好な経過をたどることがわかります。
しかし、遠隔転移してしまうと生存率は53.4%まで下がり、治療の選択肢も制限されてしまいます。
つまり、同じ前立腺がんでも「どの段階で見つかるか」によって、その後の治療や生活に大きな違いが出てくるのです。
だからこそ「症状がないから大丈夫」と油断せず、前立腺がんの早期発見に向けて行動するようにしましょう。
予防・早期発見のために無症状のうちからできる3つのこと
前立腺がんは初期症状が出にくいため、「症状がないから大丈夫」と思っていると発見が遅れてしまうことがあります。
だからこそ、症状がないうちから予防と早期発見のためにできることを意識してみてください。
ここでは、がん予防のためにすぐに実践できる3つの方法をご紹介します。
定期的にがん検診を受ける
前立腺がんは初期には自覚症状がほとんどなく、症状が出たときにはすでに進行していることも少なくありません。そのため、症状がない段階から定期的に検診を受けることが早期発見につながります。
とくに有効なのが、血液検査によるPSA検査です。50歳を過ぎた方や、家族に前立腺がんの既往がある40歳以上の方は、1年に一度PSA検査を受けることをおすすめします。
自治体によっては前立腺がん検診に補助や助成制度を設けている場合もあり、費用を抑えて受けられることもあります。
生活習慣を整える
前立腺がんをはじめ多くのがんの発症には、以下のような生活習慣が大きく影響していることがわかっています。
- 喫煙
- 飲酒
- 食生活
- 身体活動
とくに喫煙をする方は、そうでない方に比べて何らかのがんになるリスクが1.5倍高まるといわれています。飲酒を控えることや減塩、野菜や果物の摂取を心がけることに加え、日常的に歩いたり体を動かす時間を増やすこともがん予防には効果的です。
すぐに結果は出なくても、続けることで前立腺がんを含めたがん全体のリスク低減につながるでしょう。
*国立がん研究センター がん情報サービス 科学的根拠に基づくがん予防
がんリスクチェックを活用する
前立腺がんの早期発見を目指す方法のひとつに、「がんリスクチェック」の活用があります。
自宅で簡単に受けられるサービスも増えており、たとえば尿を送るだけで複数のがんリスクを調べられる「マイシグナル・スキャン」などがそのひとつです。
こうしたサービスを利用することで、自覚症状がない段階から自分のリスクを把握でき、必要に応じて医療機関での精密検査につなげられます。
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とくに、忙しくて定期的ながん検診を受けにくい方や、まずは自分のリスクを知りたい方におすすめです。
検査結果をもとに、生活習慣の見直しや医療機関での受診など、自分にあった具体的な行動へとつなげることができます。
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※ 卵巣がん・乳がんは女性のみ、前立腺がんは男性のみ検査対象となります。
\すい臓がんもステージ1から/
尿でがんのリスク検査
「マイシグナル・スキャン」
尿のマイクロRNAを調べ、がんリスクをステージ1から判定。早期発見が難しいとされるすい臓がんをはじめ、日本のがん死亡総数の約7割を占める10種のがんリスク※を、⼀度でがん種別に調べます。
- ※ 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)、ただし造血器腫瘍を除く
前立腺がんの症状でよくある質問
前立腺がんの症状に関して、よくいただく質問に回答します。
- 前立腺がんの症状にかゆみはありますか
- 前立腺のしこりはセルフチェックできますか
- 性行為は前立腺がんの原因になりますか
前立腺がんについて正しく理解し、根拠のない不安を解消しましょう。
前立腺がんの症状にかゆみはありますか
前立腺がんの症状として「かゆみ」が現れることは基本的にありません。
前立腺がんは、尿の勢いの低下や残尿感、血尿など泌尿器系に関わる症状が中心です。
もし陰部のまわりにかゆみがある場合は、湿疹や性感染症など別の要因を考える必要があります。
前立腺のしこりはセルフチェックできますか
前立腺がんは体の表面から触れられる位置にないため、しこりを自分で触って見つけることはできません。
そのため、乳がんのように自分でしこりを触って発見するセルフチェックは前立腺がんでは不可能です。
前立腺がんの早期発見には、血液検査によるPSA検査が有効とされています。とくに、50歳を過ぎた方や、家族に前立腺がんの経験者がいる方は、定期的に検査を受けることが早期発見につながります。
性行為は前立腺がんの原因になりますか
性行為そのものが、前立腺がんの原因になるという科学的な根拠はありません。
前立腺がんの主なリスク要因としては、加齢や家族歴があげられます。
自宅でがんリスクを確認する新しい選択肢
前立腺がんは初期症状が乏しく、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。しかし、早期に見つけられれば治療の選択肢は広がり、予後も比較的良好です。
前立腺がんを早期発見するためには、症状がなくても定期的にPSA検査を受けることが大切です。
通院が難しい方には、自宅で手軽にがんリスクを調べられる「マイシグナル・スキャン」という新しい選択肢もあります。大切なのは「自分は大丈夫」と思い込まず、がんのリスクを知ることです。
がんに対する意識を高めて、将来の健康と安心につなげましょう。
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この記事の監修者

近藤理美
臨床検査技師 医療ライター
急性期病院で8年間臨床検査技師として勤務。
自身の臨床経験と確かなエビデンスを元に、医療メディアを中心として記事を執筆