がん検査
肺がんを早期発見 – 肺がんの検査方法・費用・頻度
- 公開日: 4/20/2023
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- 最終更新日: 9/13/2024
先生
実は日本人男性のがん死亡数第1位が肺がんです(※1)。また女性の中でも、肺がんはがん死亡数第2位に入っています。
国内での肺がんの罹患数は126,548人(2019年データ)、死亡数は75,585人(2020年データ)です(※2)。
出典:
質問者
この図を見るとやっぱり怖いですね。ヘビースモーカーの私が肺がんに罹らかからないようにする方法ってありますか?
先生
肺がんに罹りたくないのであればまず禁煙を始めましょう。ただ、禁煙したからといって肺がんにかかるリスクがゼロになるわけではありません。
肺がんは死亡率の高い疾患ですが、それは早期発見が難しいからと言われています。実際に肺がんは進行してから見つかることが多く、命を落とすケースも。
早期発見するためには、毎年肺がん検査を受けることが大切です。
ここでは、肺がんの初期症状や種類、検査法、診断法について詳しく解説していきます。
この記事で分かること
- 早期の肺がんは特徴的な症状が無く、気づきにくい
- 気づいたときには進行していることが多く、がんの中でも死亡率が高い
- 肺がんの危険因子として、たばこ、アスベスト、大気汚染物質、遺伝などが挙げられる
- 肺がんには非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)と小細胞がんの4種類の組織型が存在する
- 肺がんの早期発見には、毎年がん検査(一次検査)を受けることがすすめられる
- 一次検査では、一般的に胸部レントゲン検査と喀痰(かくたん)細胞診検査を受ける
- 一次検査で肺がんの疑いがある場合は精密検査へ移り、細胞や組織を採取して顕微鏡レベルでチェックする病理検査を受ける
- 肺がんの確定診断後は、ステージや組織型に応じて治療方針を決める
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目次
自覚症状・前兆はある?肺がんの概要
質問者
そもそも肺がんってどういう状態なんですか?肺の中って空洞なイメージがあるのでどこにがんができるのかよく分かりません。
先生
肺は酸素を取り込んで、体内の二酸化炭素を口に送り出す、生命活動に欠かせない役割を担っていますよね。肺の構造を簡単に示すと以下のようになります。
肺がんの多くは肺の入り口の気管支の部分「肺門部」と、気管支の末梢(先の方)から奥の部分「肺野部」に発生します。
肺がんの初期症状
質問者
肺がんは早期発見が難しいってことですが、何か初期症状はないんでしょうか?
先生
残念ながら早期の肺がんに特徴的な症状はありません。
ただ、
- 風邪でもないのに咳と痰が2週間以上続く
- 血の混じった痰が出る
- 発熱が5日間以上長引く
といった場合は注意が必要です。
一方で、肺がんが進行すると大きくなったがんが気管支を圧迫して息苦しさや肺炎を引き起こしたりします。また肺に水が溜まったり、がんが神経にまで広がって痛みを生じることもあります。
質問者
ここまで症状が出ていると末期に近いんですね……。
先生
そうですね、そうならないためにも是非早期発見に努めてもらいたいと思います。
肺がんのステージと5年生存率
がんは進行度合いに応じて4つのステージに分類されます。Ⅰ期は早期であり、右に行くほどがんが進行していることを意味します。
ステージ毎のがんの状態は下記の通りです。
- Ⅰ期:転移が無く、がんが小さい
- Ⅱ期:転移は無いががんが大きい、あるいは同じ肺の中で転移がある
- Ⅲ期:がんが肺の周りの組織や臓器、リンパ節にも転移している
- Ⅳ期:遠隔転移があったり、胸水にがん細胞がみられる
質問者
ステージⅣだと、完治は望めないのでしょうか?
先生
完治は難しいですね。肺がんと診断されてから5年後に生存している人の割合が日本全体の人口と比べてどのくらい低いかを示す「5年相対生存率」を見てみると、
・がんが限局的で広がっていない状態(初期):83.5%
・がんが周りに広がっている状態:31.1%
・がんが遠隔転移している状態(かなり進行):6.4%
というデータが示されています。
質問者
早期で発見できると、生存率は8割以上で高い値ですが、進行してしまうと一気に生存率が低下してしまうんですね。いかに早期発見が大事なのか、よく分かりました!
肺がんにかかりやすい人の特徴、危険因子とは
肺がんのリスクを上昇させる危険因子として、たばこが挙げられます。
たばこを吸うと肺がんにかかるリスクが男性で4.8倍、女性で3.9倍に上昇し、喫煙年数や本数が多いほどリスクが上がることがわかっています(※3)。
質問者
やっぱりたばこの影響はかなり大きいんですね……。遺伝とか他の要因も関係あるんですか?
先生
肺がんには遺伝的な要因も指摘されています。例えば、肺がんを患った血縁者のいる人はそうでない人と比べて肺がんの発症リスクが高くなる傾向があることが分かっています(※4)。その他、アスベストなどの有害物質や大気汚染物質、受動禁煙も危険因子です。
肺がん4つの種類と症状・特徴
肺がんには様々な種類があります。その中でも特に日本人に多い4つの肺がん「肺腺がん」「肺扁平上皮がん」「大細胞がん」「小細胞がん」の症状・特徴について解説していきます。
組織型 | 多く発生する場所 | 特徴 |
肺腺がん | 肺野部 | ・肺がんの中で最も多い |
肺扁平上皮がん | 肺門部 | ・咳や血痰などの症状があらわれやすい ・喫煙との関連が大きい |
大細胞がん | 肺野部 | ・増殖が速い |
小細胞がん | 肺門部・肺野部ともに発生 | ・増殖が速い ・転移しやすい ・喫煙との関連が大きい |
質問者
肺がんもこんなに種類があるんですね。
先生
これらは組織型とも呼ばれていて、特に薬物治療の選択において重要になります。
肺腺 (はいせん) がん
肺腺がんは肺がんの中で最も多く、2010年データで69.4%を占めており、増加傾向にあります(※4)。また、肺腺がんはたばこを吸わない人や若い人にも発症すると言われています。肺腺がんは肺野部つまり、肺の奥に発生するがんなので症状はなかなか表れません。
質問者
たばこを吸わないからと言って油断できないってことですね。
先生
そうですね。肺腺がんは大気汚染や女性ホルモンとの関連が指摘されています。早期肺腺がんの知見も蓄積されているので、定期的に肺がん検査を受けていきましょう。
肺扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん
扁平上皮がんは扁平上皮という組織に発生するがんであり、肺扁平上皮がんは肺門部に多く発生します。肺がんの中でも特にたばことの関連が強いと言われています。実は扁平上皮は正常な肺には存在しません。しかし、たばこや発がん物質などの有害物質による傷害で扁平上皮が発生し、それががん化すると言われています。
肺扁平上皮がんは肺がん全体の25~30%程度を占めており、肺腺がんに次いで頻度の高い肺がんです(※5)。
質問者
ヘビースモーカーの私は扁平上皮がんに最も気をつけなければならないですね。
大細胞肺がん
大細胞肺がんは、肺野部に発生することが多く、肺腺がん・肺扁平上皮がん・小細胞肺がんのいずれにも属さない、細胞の大きながんを指します。全体の5%程度と頻度は高くありませんが、大細胞肺がんは増殖が速いという特徴を持ちます(※5)。
小細胞肺がん
小細胞がんは、肺門・肺野部いずれにも発生することがあり、肺腺がん・扁平上皮がんのいずれにも属さない、細胞の小さながんを指します。肺がん全体の14%程度を占めます(※6)。
他の組織型に比べて増殖が最も速く転移しやすいという特徴を持ちます。
小細胞がんは非小細胞がんと異なる性質を持つため、治療方針が異なります。
また、たばことの関連が強いので注意が必要です。
質問者
小細胞がんは悪性度が高いですね。増殖が速いってことは早期発見が難しいってことですよね?
先生
その通りです。そのため、小細胞がんの5年生存率は限局型で約25%、進展型で0~5%で、小細胞がん全体の5年生存率は10%未満と言われています(※7)。
質問者
えっ?そんなに低いんですか?
先生
残念ながら小細胞がんはかなり初期の段階で発見できなければ完治が難しいんです。
検査 ・検診は何科?肺がん検査の流れ・全体像
質問者
肺がんを早期発見するためにはどんな定期検査を受けるんでしょうか。
先生
まず肺がん検査は、大きく一次検査(スクリーニング検査)と精密検査の二つに分かれます。一次検査では問診と胸部レントゲン検査を実施し、肺がんの可能性のある人をスクリーニング(ふるい分け)します。ヘビースモーカーなどハイリスクの人はこれらの検査に加えて喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)という検査も行います。検査内容については後ほど詳しく説明しますね。
肺がん検査の流れは以下の通りです。
なお、肺がんを疑うような長引く咳や血痰といった症状が見られる場合は医師の判断により、一次検査を受けずに精密検査を受けることもあります。
質問者
このような検査は何科に行けばいいんですか?
先生
肺がん検査は呼吸器内科に行けば受けられますよ。40歳以上であれば地方自治体が実施する肺がん検診を受けられます。
肺がん検査・検診は何歳から受検すべき?
質問者
40歳以上は肺がん検診を受ければいいんですね。30代や20代は検査不要ですか?
先生
肺がんは40歳未満であっても発症する病気です。1日あたりの喫煙本数が多かったり喫煙年数が長い場合や血縁者に肺がんの方がいる場合は、肺がんの危険因子を持つので医師と相談して肺がん検査を定期的に受けた方が良いでしょう。
また何か気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
質問者
会社で受ける健康診断は肺がんの一次検査にならないんですか?
先生
なりますよ!毎年健康診断で胸部X線検査と必要に応じて喀痰細胞診検査を受けていれば肺がんの検査も含まれていることになります。ちなみに喀痰細胞診検査は50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人が対象となります。
質問者
そうなんですか?私は毎年健康診断を受けて「異常なし」って結果が出ているから今の所大丈夫そうですね。
ただ、一次検査にも見落としがあります。特にX線検査では写らないほどの小さながんや他の臓器と重なって見えていないがんが存在する可能性もあります。実際に胸部X線検査の肺がん検出感度は60~80%と報告されています。(※8)また、レントゲンを見て病変部を確認する「読影」についても医師の技量に左右されると言われています。
このような背景から初期の小さな肺がんは見落とされてしまうことがあるのです。
肺がんの見落としを減らすために、肺がん検査キットを活用してみるのもおすすめです。これについては後ほど、尿検査のところで詳しく解説します。
毎年やるべき?肺がん検査・検診の受検頻度は?
質問者
肺がん検査はどのくらいの頻度で受けるのがいいんでしょうか。
先生
国の指針では40歳以上の男女を対象に1年に1度の肺がん検診をすすめています。胸部X線検査と必要に応じて喀痰細胞診検査を実施し、肺がんリスクの高い人に積極的に検査を受けてもらうよう働きかけています。
質問者
でも肺がん検査・検診のレントゲンって、X線ですよね?そんな頻繁に放射線を浴びて身体に害はありませんか?
先生
胸部X線撮影で受ける放射線量は身体に影響を及ぼす量ではありません。最近ではX線機器もどんどん改善されていますしね。ただ、妊婦の方は事前に医師と相談してくださいね。
今すぐできる、肺がんセルフチェックの方法とは?
質問者
肺がんは自宅で簡単にセルフチェックを行えないんでしょうか。
先生
肺がんは乳がんのようにしこりができたりするわけではないので、触って確かめるというような方法はありません。ただ、以下のような症状が見られる場合は注意が必要です。
- しつこい咳(特に赤茶色の痰を吐く場合)
- 息切れ
- 声が枯れる、しわがれ声
- 慢性気管支炎
- 胸の痛み
- 原因不明の体重減少
- 骨の痛み
肺がんの初期は一般的に明確な症状が現れません。あまり気にならないような上記の症状であっても、一つでも当てはまる場合は医療機関を受診しましょう。
肺がんの一次検査・スクリーニング検査の種類と結果の見方
それでは、肺がんの可能性をふるい分けするために行う3種類の一次検査と結果の見方について解説していきます。
質問者
一次検査は肺がんの早期発見に役立つんですよね?
先生
はい。一般的なのが「胸部X線検査」「喀痰 (かくたん) 細胞診検査」です。肺がんの見落としを減らすためにここで紹介するがん検査キット(尿検査)もおすすめです。
胸部X線検査 | 喀痰細胞診検査 | 尿検査 | |
特徴 (どういうステージ・種類のがんを調べるのに適切か、利便性等、各検査方法固有のもの) | ・被ばくがある ・肺野部のがんの発見に向いている(腺がん) | ・肺門部のがんの発見に向いている(扁平上皮がん) | ・尿中の物質を調べる ・早期発見も可能 |
食事制限 | 無し | 無し | 無し |
結果が出るまでの日数 | 検診の場合、10日~1ヶ月程度 | 検診の場合、10日~1ヶ月程度 | 1ヶ月程度 |
費用(自費・保険適用) | ・保険適応の場合は数百円から1,000円程度 ・自費の場合は1,000円〜数千円2程度 | ・保険適応の場合は数百円から1000円程度 ・自費の場合は数千円程度 | ・マイシグナルの場合、7がん種セットで53,900円 |
出典:
- 国立研究開発法人国立がん研究センター「肺がん検診」
何か気になる症状があって医療機関で胸部X線検査や喀痰細胞診検査を受ける場合は医師の判断により保険適用となります。ここで記載している尿検査はいずれも自費となります。
胸部X線検査 (レントゲン検査)
胸部X線検査はいわゆるレントゲン検査のことです。肺がんだけでなく、結核や心臓病、気管支炎などの病変も分かります。
質問者
よくTVドラマとかで「肺に影があります」って医師が患者に伝えてますよね?あのフィルムが胸部X線検査で撮影されたものなんですよね?
先生
そうです。息を大きく吸って肺を膨らませた状態で撮影します。薬剤を使用したりしないので身体への負担もなく痛みもありません。
肺は通常黒く写りますが、病変部は白く写ります。特に腫瘍は白い影として現れます。撮影されたフィルムを見て肺がん所見の有無を判断する(読影する)のは医師です。影がはっきり写ることもありますが判断が難しい症例も多いです。
X線で写し出される影には、線状影(せんじょうえい)・索状影(さくじょうえい)・粒状影(りゅうじょうえい)・結節影(けっせつえい)などの種類があり、健常者でも写るものや炎症が原因となるものもあります。ただ、円形に写る結節影はがんである可能性があるので注意が必要です。
がんの可能性が否定できない場合は精密検査となります。
喀痰 (かくたん) 細胞診検査
喀痰細胞診検査は、3日間起床時に痰を採り、顕微鏡を用いてその痰の中の細胞を調べる検査です。肺門部にできたがん細胞は、痰に紛れて出やすいと言われています。
喀痰細胞診の結果は以下の5つに分類されます。
クラス分類 | 説明 |
A | 検体不良。再検査。 |
B | 特に問題無し。 |
C | 悪性になる前の段階の中等度の異型細胞が認められる。6ヶ月以内に再検査。 |
D | 悪性の可能性のある細胞が認められる。精密検査が必要。 |
E | 悪性の腫瘍細胞が認められる。早急に精密検査が必要。 |
出典:
肺がん検診において喀痰細胞診は、50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人、あるいは40歳以上で半年以内に血痰が出た人が対象です(※9)。
質問者
痛みが無いのはいいですが、3日間も毎朝痰を採るのは少し面倒に感じてしまいます。そもそも痰が出ない場合はどうしたらいいんですか?
先生
痰が上手く採取できなければ検査の感度が落ちてしまいます。コツとしては少し水を飲んで大きく深呼吸をして強い咳をしながら深部から痰を出すようにしましょう。
尿検査
質問者
尿検査でも肺がんの可能性の有無が分かるんですか?
先生
国が推奨する肺がん検診や、医療機関で行う一般的な肺がん検査は、前述した「胸部X線検査」と「喀痰細胞診検査」です。ただ、この2つ以外にも尿検査で肺がんのリスクの有無を調べることが可能なんです。
質問者
それは是非知りたいです!
尿には体内の様々な物質が排出されます。体内にがんがあると特定の物質が増減するなど変化が見られることが分かっています。その変化を検出する検査方法があるのです。
例えばマイシグナルでは、尿中に含まれるマイクロRNAという物質を分析してがんのリスクを数値化します。
マイクロRNAとは細胞間のコミュニケーションを担う伝達物質の1つであり、体内にがん細胞が存在すると尿中の特定のマイクロRNAの増減がみられることが分かっています。肺がんを含め、乳がん・胃がん・大腸がんといったがん種毎のリスク判定が可能です。マイシグナルも早期のがんリスクを検知できます。
注意点として保険は適用されません。そのため、コストはかかりますが、肺がん検診や肺がん検査に加えて自宅で定期的に受けることで、肺がんを検出する確率を高めることが可能です。
質問者
このようながん検査キットを活用すれば、肺がん早期発見の手助けになるってことですね!自宅で尿を採取できるのも有難いですね。
先生
尿検査であれば手間がかからないので継続しやすいのではないでしょうか。がん検診に加えて是非このようながん検査キットも活用してみてください。
腫瘍マーカーや血液検査は肺がんの一次検査に不向き?
腫瘍マーカーとはがん細胞の存在により尿中や血液中に増える物質の総称です。
質問者
健康診断で毎年腫瘍マーカーを調べてもらっているんですが、これは肺がんの検査にならないんですか?
先生
腫瘍マーカーで全身のがんのリスクの有無を調べられると思っている方は多いのではないでしょうか。残念ながら、腫瘍マーカーは基本的にがんの早期発見には向いていません。
肺がんの腫瘍マーカーとして用いられるものの一つが「CYFRA (シフラ)」です。特に扁平上皮がんで特異的に上昇すると言われています。ただ、非小細胞がんに対する検出感度は41~65%と、決して高い数値とは言えません。(※8)また、呼吸器疾患や胃腸疾患、加齢などでもシフラは異常値を示すことがあります。
このように、腫瘍マーカーの多くは体調や年齢に左右されたり、がんがかなり進行してからでないと異常値を示さなかったりと、早期発見を目的とする場合はあまり参考にならないのです。
一方で、がんの再発や転移の有無、がんの治療効果、がんの診断の補助としては役立ちます。
質問者
肺がんの腫瘍マーカーが正常値だったからといって肺がんではないと安心したらいけないってことですね。
先生
はい。一次検査の結果、肺がんの疑いがあって精密検査の段階で腫瘍マーカーを調べる場合は有用ですが、肺がんのスクリーニング検査にはならないことを覚えておきましょう。
肺に影?肺がんの疑いありと言われた際の追加再検査・精密検査の種類と特徴
質問者
一次検査を受けて「肺に影」とか「肺がんの疑い有」って結果が出たらどうなるんでしょうか。手遅れになる前に一刻も早く治療しないといけないですよね。
先生
“一次検査で異常あり=肺がんと診断”されたわけではありません。肺がんの可能性があるので精密検査を受ける必要があります。
一次検査の結果に応じて、様々な検査を組み合わせて確定診断を導きます。
基本的な流れとしては、まず画像検査(胸部CT検査)で肺がんの疑いがある場所を特定し、次に肺がんが疑われる場所の細胞や組織を採取して顕微鏡でがん細胞の種類を調べます(病理検査)。病理検査では結果が出るまでに数日から2週間程度の時間がかかります。
加えて血液検査(腫瘍マーカー検査)も診断材料として行われることがあります。これらを総合的に判断して、医師が確定診断を下します。
代表的な追加検査について一覧表にまとめました。
概要・特徴 | |
胸部CT検査 | ・X線を使って身体の内部を3次元的に画像化 ・小さながんの検出も可能 ・形や広がりも分かる |
気管支鏡検査 | ・内視鏡で細胞や組織を採取する ・体表を傷付けない検査法 ・苦痛を伴う ・合併症のリスク有 |
経皮的針生検、CTガイド下肺針生検 | ・身体の表面から針を刺して細胞や組織を採取する ・小さながんの検出も可能 ・体表に近い部位の採取を得意とする ・気管支鏡検査が使えない場合に行う ・合併症のリスク有 |
胸腔鏡検査 | ・胸を切開して内視鏡を挿入し胸腔内の組織や細胞を採る ・他の検査法で診断できない場合に実施する ・身体に傷も残り、負担の大きい検査法 ・合併症のリスク有 |
MRI検査 | ・強い磁場の中でラジオ波を当てて身体の内部を画像化する ・がんの広がりや全身の転移を調べるのに向いている |
骨シンチグラフィー検査 | ・がんが骨に転移していないかを特殊な薬剤を用いて調べる ・被ばくする |
PET (ペット) 検査 | ・がん細胞に放射性物質でラベルしたブドウ糖を取り込ませ、画像化する ・がんの広がりや全身の転移を調べるのに向いている ・保険適用には条件がある ・被ばくする ・食事制限あり |
腫瘍マーカー検査 | ・血液を採取して肺がんの腫瘍マーカーを調べる ・腫瘍マーカーは治療効果やがんの進行度を調べるのに向いている |
なお、一次検査を受けて精密検査の必要があると医師が判断した場合、これらの検査は基本的に保険が適用されます。
詳しく見ていきましょう。
胸部CT検査
CT検査は身体の周囲からX線を当てて臓器を輪切りにした状態で画像化します。画像を鮮明にするために造影剤を体内に取り込んでから撮影することもあります。
一次検査で用いる胸部レントゲン検査は2次元的に画像化しますが、CT検査では3次元の画像が撮影できます。そのため、胸部レントゲン検査では臓器が重なって見えにくい部分なども3次元で捉えることにより、小さながんや見えにくいがん、さらにはがんの形や広がり、正確な位置も詳しく検出可能です。
ただ、胸部レントゲン検査と比べると被ばく量が高くなります。
CT検査では胸部X線検査と同様、異常影は白く写し出されます。
気管支鏡検査
気管支鏡検査では、内視鏡(先端に小型カメラのついた細い管)を鼻や口から挿入して気管支の中を観察し、がんが疑われる場所の細胞や組織を採取します。スプレーで局所麻酔をしたり、長時間に及ぶ場合は鎮静剤を用いたり、全身麻酔をすることもあります。
外来で行うこともあれば入院を必要とする場合もあります。気管支鏡検査前後は数時間絶食しなければなりません。また、呼吸する部分に内視鏡を通すので苦痛を伴う検査です。
細胞や組織を採取して調べるので画像検査では分からないがんの種類や悪性度なども判断できます。内視鏡を用いるので身体の表面に傷をつけないで細胞や組織を採取できる点が大きなメリットといえます。
一方で、気管支鏡検査を行っても肺がんかどうか診断がつかない場合もあります。また、出血・肺炎・気胸(肺に穴があいてしぼむ)といった合併症を招くリスクを伴います。
経皮的針生検、CTガイド下肺針生検
経皮的針生検は、局所麻酔をして身体の外から細い針を刺してがんの疑いがある部位の細胞や組織を採取する精密検査です。
超音波やCTなどで身体の内部を確認しながら行います。CTを用いながら針生検を行う(CTガイド下肺針生検)だと、1cm以下の小さながんの確定診断も可能です。病変部が肺の下側にあり、気管支鏡が届かない場合や気管支鏡検査で診断がつかない場合などに経皮的針生検が行われます。
体表に近い病変部の検査を得意としている一方で、出血や処置によりがん細胞を広げてしまうといった合併症のリスクがあります。
経皮的針生検は日帰りあるいは入院で行います。
胸腔鏡検査
胸腔鏡検査では、胸を小さく切り、そこから内視鏡を胸腔内に挿入して、肺・胸膜(肺の表面を覆う膜)・リンパ節の組織を採取して調べます。
全身麻酔あるいは局所麻酔を用います。身体にメスを入れるので身体的負担が大きく、入院も必要となります。他の検査法で診断がつかない場合に胸腔鏡検査が実施されます。
合併症には出血・肺炎・気胸などがあります。
MRI検査
MRI検査はラジオ波を当てて身体の内部を画像化します。全身を一度に調べられるのでがんの有無だけでなく、がんの広がりや他の臓器への転移が無いかどうかを調べる目的で使います。
痛みはなく、被ばくもしませんが、肺がんの画像解析という視点で考えると空間分解能が下がるためCT検査に比べると劣ってしまうと言えます。また、MRI検査では強力な磁石や電波を使用するためペースメーカーなど体内に金属類が入っている場合は受けられないことがあります。
一方で、入院の必要もないので、気軽に受けられる検査と言えます。
骨シンチグラフィー検査
骨シンチグラフィー検査はがん細胞が骨に転移していないかどうかを調べる検査です。
放射性物質でラベルした、がんの転移がある骨に集まりやすい薬剤を注射して、約3時間後に撮影し画像化します。
がんのある部分に薬剤が集まり放射線が放出され、黒く写し出されます。放射線物質を使うのでX線検査やCT検査で受ける程度の被ばくがあります。
また、骨折や骨の変形でも黒く写ることがあるので注意が必要です。
PET (ペット) 検査
PET検査では、がん細胞がブドウ糖を取り込みやすい性質を利用し、放射性物質でラベルしたブドウ糖類似物質を注射して全身のがん細胞に取り込ませます。
CT検査やMRI検査と組み合わせることで高精度にがんの検出が可能です(※10)。
一度にほぼ全身の撮影が可能な点が強みです。一方で、糖尿病患者や、がんに関係なくブドウ糖が集まりやすい臓器(胃や腸や脳など)では正確な結果を得られないことがあります。
PET検査は他の検査法で診断が難しい場合のみ、保険適用となります。痛みや入院の必要が無く、一度にがんの有無や広がり・転移を全身で調べられます。ただ、検査5時間前から絶食しなければなりません。(糖類を含んでいない水やお茶を除く)詳細はこちらの「全身のがんを調べるPET(ペット)検査とは?費用・結果の見方を解説」をご覧ください。
腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカー検査は、前述の通り、早期発見を目的とする検査法としては向いていません。肺がんの腫瘍マーカーが高値を示したからといって、肺がんとは限らないのです。
がんの進行に応じて腫瘍マーカーの値が上昇することも多いため、診断や治療効果の参考として使用されます。
質問者
たくさんの検査法があってちょっと混乱してしまいました。
先生
それでは精密検査の流れをまとめますね。
基本的にどのがんでも大まかな流れは同じなのですが、覚えてほしいのは、まずは画像検査で場所や大きさを特定し、次に生検などで実際にがんを取り出して、顕微鏡で詳しく見ることで確定診断を行います。
さらに、必要に応じて腫瘍マーカーや、転移を調べるためのPET、MRI検査を用いて総合的に病状を判断し、治療方針を決定します。
肺がんの場合は、このような流れになります。
- がんの有無や場所を特定する画像検査: 胸部CT
- 確定診断をする病理検査:気管支鏡検査、経皮的針生検、CTガイド下肺針生検、胸腔鏡検査
- 必要に応じてがんの広がりを確認する検査:MRI検査、骨シンチグラフィー検査、PET (ペット) 検査、腫瘍マーカー検査
質問者
肺がんの確定診断を下すまでにはかなりのステップ・時間が必要ですよね。もっと簡単に分かる方法は無いんでしょうか?
先生
がんは医療技術が進んだ現代においても死亡率が高い病気です。それだけ複雑な病気だからこそ、様々な検査を駆使しないとがんを正しく捉えて適切に治療をするのが難しいんです。
精密検査で肺がんと診断されたら?
質問者
いろんな精密検査を受けて肺がんって診断が出た場合、その後どうなるのでしょうか。
先生
まずは治療方針を決める必要があります。治療方法には手術や放射線治療、薬物治療など、状況によって様々な方法があります。その中で何が最適化は肺がんと診断されたときのステージや組織型、遺伝子型によっても変わってきます。いずれにしても専門の先生としっかり話し合いをして、納得した上で治療方針を決めていくことが大切です。
まとめ、肺がん早期発見のためにできること
それではここまでをまとめましょう。
- 早期の肺がんは特徴的な症状が無く、気づきにくい
- 気づいたときには進行していることが多く、がんの中でも死亡率が高い
- 肺がんの危険因子として、たばこやアスベスト、大気汚染物質、遺伝などが挙げられる
- 肺がんには非小細胞肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん)と小細胞がんの4種類の組織型が存在する
- 肺がんを早期発見するには、毎年がん検査(一次検査)を受けることがすすめられる
- 一次検査では、一般的に胸部レントゲン検査と喀痰(かくたん)細胞診検査を受ける
- 一次検査で肺がんの疑いがある場合は精密検査へ移り、がん細胞や組織を採取して顕微鏡レベルでチェックする病理検査を受ける
- 肺がんの確定診断後はステージや組織型に応じて治療方針を決める
肺がんはがんの中でも死亡者数が男性で1位、女性で2位の疾患です。早期発見できれば、完治が望めますが、進行してから見つかると手遅れになることも多く、毎年の肺がん検診が重要です。
また、地方自治体が実施する肺がん検診の対象とならない年齢(40歳未満)で肺がんの危険因子を持つ人は、毎年呼吸器内科を受診して胸部X線検査や喀痰細胞診検査を受けたり、肺がん検査キットを活用したりしましょう。
質問者
私のようなヘビースモーカーは肺がん検査を先送りにしていたらダメですね。きちんと受けるようにします。
先生
禁煙も先送りしないでくださいね。大事な身体を守るためです。肺がん検査キットでは是非マイシグナルを検討してみてください。
- 国立がん研究センター「肺腺がんについて」
- 日本医師会「肺がん検診」
- 東京都予防医学協会「肺がん検診」
- 日本予防医学協会「胸部レントゲン検査」
- がん情報サービス「肺がん 検査」
- がん情報サービス「X線検査」
- がん情報サービス「CT検査」
- 日本肺癌学会「肺がんの診断に必要な検査」
- がん情報サービス「非小細胞肺がん 治療」
- がん情報サービス「小細胞肺がん 治療」
- 国立がん研究センター中央病院「肺がん」
- 日本肺癌学会「危険因子と臨床症状,検出方法」
- がん情報サービス「X線検査とCT検査の違いは?」
- がん情報サービス「CT検査とは」
- 日本肺癌学会「肺がんかどうかを調べるための検査について教えてください 」
- がん情報サービス「MRI検査とは」
- ※本記事に記載されている費用は当社(Craif)が独自で調べたものになります。実際の費用は各医療機関にお問い合わせください。
この記事の著者
太田知見
医学修士・薬剤師・メディカルライター
神戸大学医学研究科を卒業後、大手化粧品会社の研究開発部に勤務。その後、臨床薬剤師の経験を積み海外へ移住。現在はメディカルライターとして製薬会社やバイオベンチャー企業のライティング業に従事している。
この記事の監修者
平野雅規
医師・博士(医学)
東京大学医学部卒業後、名古屋大学大学院医学系研究科博士課程修了。脳神経外科専門医、がん治療認定医。名古屋大学研究員、日本学術振興会特別研究員PD(愛知県がんセンター研究所分子腫瘍学分野)を経て、現在、公立学校共済組合 東海中央病院(脳神経外科)、河村病院(一般内科)にて非常勤勤務医師、愛知県がんセンター研究所研修生。
質問者
私は長年ヘビースモーカーでして……。日本人に多いと言われている肺がんが心配なんですよね。だけど仕事が忙しくてなかなか検査を受けられずにいます。