がん検査
乳がんが見つかりづらい?高濃度乳腺(デンスブレスト)とは
- 公開日: 1/30/2023
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- 最終更新日: 9/13/2024
先生
「高濃度乳腺」は、以前、TVドラマ「ラジエーションハウス」でも取り上げられて一時期話題になったから聞いたことある人もいるかと思いますが、「高濃度乳腺」は乳腺組織がよく発達した乳房のことで、「乳がん」ではありません。
乳房の内部は、大きく分けて、乳腺組織と脂肪組織からできていて、乳腺組織の割合が多い乳房を高濃度乳腺あるいはデンスブレストと呼んでいます。欧米人と比べて日本人女性に多い乳房構成のタイプと言われています。デンスブレストが注目されているのは、マンモグラフィ検査で乳がんが見つかりにくかったり、乳がんの発症リスク因子と言われているからです。
尚、マンモグラフィについてはマンモグラフィは痛い?検査前の注意点から結果の見方まで解説で詳しく解説しておりますので、是非参考にしてみてください。
質問者
えーやっぱりデンスブレストは乳がんになりやすいってことじゃん……。
先生
高濃度乳腺は決して珍しい所見ではないし、その人の体質によるもので、それ自体は病気ではありません。確かに、高濃度乳腺はそうでない人に比べて乳がんになりやすいと言われていますが、定期的にきちんとセルフチェックを実施して乳がん検診を受けていればむやみに怖がる必要はありません。
ここではデンスブレストのリスクや判断法などについて詳しく解説していきます。
この記事で分かること
- 乳房内の組織構成タイプは乳腺密度の低い順に「脂肪性乳腺」「乳腺散在」「不均一高濃度乳腺」「高濃度乳腺」の4つのタイプに分けられる
- 乳腺密度の高い「不均一高濃度乳腺」と「高濃度乳腺(極めて高濃度)」をデンスブレストと呼ぶ
- マンモグラフィ検査においてデンスブレストの場合、乳がん検出の感度が落ちる(がんが見つかりにくい)
- デンスブレストの女性はそうでない人と比べると、乳がんの発症率が若干高いと言われているがその理由はよく分かっていない
- 日本人女性は欧米人と比べてデンスブレストの割合が高い
- デンスブレストは自覚症状も無く病気でもない。また加齢と共に乳腺組織が脂肪組織へと次第に置き換わる
- デンスブレストと伝えられた場合は、できるだけ乳がんを見逃さないように、乳腺エコーも併せて受けることがすすめられる
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目次
高濃度乳腺 (デンスブレスト) とは?マンモグラフィでわかる、4つの乳腺濃度・密度
質問者
デンスブレストってそもそも何?体質ってどういうこと?
先生
デンスブレストは乳腺密度が高い状態の乳房のタイプを指します。マンモグラフィ検査において使われる用語です。
質問者
へ~じゃあデンスブレスト以外にどんなタイプがあるの?
乳房は大きく分けて、乳腺と脂肪組織からできていて、マンモグラフィの画像により、乳房内の組織構成のタイプは以下の4つに分けられます。
- 脂肪性乳腺
- 乳腺散在
- 不均一高濃度乳腺
- 高濃度乳腺
これら4つのタイプのマンモグラフィ画像を以下に示しました。
出典:
- Yu Ji et al. The relationship between breast density, age, and mammographic lesion type among Chinese breast cancer patients from a large clinical dataset. BMC Med Imaging. (2021) 21:43 https://doi.org/10.1186/s12880-021-00565-9
4つの乳房は乳腺密度の違いでこれだけ見え方が異なるのです。
乳腺密度の高い「不均一高濃度乳腺」と「高濃度乳腺」をデンスブレストと呼びます。マンモグラフィの特徴として脂肪組織は黒く、乳腺組織は白く映し出されます。
脂肪性乳腺
乳房内での乳腺組織の割合が10%未満を脂肪性乳腺と呼びます。全体的に色が薄く、白く映る乳がん(病変)は気づきやすいと言えます。
乳腺散在
乳腺組織の割合が10%以上50%未満を乳腺散在と呼びます。乳腺散在タイプも白と黒のコントラストが分かりやすく、比較的乳がんを発見しやすい状態です。
不均一高濃度乳腺
乳房内で乳腺組織の割合が50%から80%未満を不均一高濃度乳腺と呼びデンスブレストに該当します。画像を見て分かるように乳腺組織の割合が増えると全体的に白っぽく見えます。この中に白く映る乳がんがあっても重なって見えないことがあるのです。
高濃度乳腺
乳腺組織の割合が80%以上を「極めて高濃度」あるいは「高濃度乳腺」と呼び、デンスブレストに該当します。
質問者
確かにこの中に白い影が映っても分かりにくいよね~
高濃度乳腺 (デンスブレスト) のリスクとは?特徴を解説
質問者
デンスブレストだとどんなリスクがあるの?
先生
実はデンスブレストの女性はそうでない人と比べると乳がんの発症率が高いと言われています。(*1)そのため乳がん発症率の高いアメリカの多くの州では、マンモグラフィ検査によってデンスブレストであることが分かった場合は本人に知らせることが義務付けられています。
質問者
デンスブレストの私は乳がんにかかりやすいってことだよね……ショック。それは、マンモグラフィで乳がんが見つかりにくいことも関係しているの?
先生
確かに、デンスブレストでは乳がんは見つかりにくい可能性はありますが、それと乳がんのリスクが高いというのは直接関係ありません。
現在のところ、なぜデンスブレストの方が乳がんの発症率が上がるのか、その理由についてはよく分かっていません。また、デンスブレストとそうでない乳がん患者の死亡率に差はありません。(*2)
高濃度乳腺 (デンスブレスト)の原因・体質とは?
質問者
そもそもどうしてデンスブレストになるの?食生活が影響しているとか?
先生
食生活が影響しているかどうか分かりません。乳腺の発達度合によるから、その人の個性とか体質と言われています。年齢は関係していて、20代30代の若年層では乳腺が発達しているため、高齢者よりもデンスブレストの割合が多いです。
また、人種差もあって、アジア人(日本人)はデンスブレストが多い人種です。
高濃度乳腺 (デンスブレスト)の改善方法は?
質問者
デンスブレストだと乳がんになりやすいんだったら、治療したり改善したりできないの?
先生
デンスブレストは正常な組織構成だから治療・改善する必要はありません。
年齢を重ねていくと乳腺は次第に脂肪組織へと置き換わっていきます。そのため高齢女性では脂肪性の乳房が増えていくのです。
質問者
そ~なんだ!年齢と共に乳房の構成も変化していくんだね。
乳腺の濃度は、年齢や授乳期間、女性ホルモンなどの影響を受けて変化していきます。また個人差も大きいので、「若いからデンスブレスト」「乳房が大きいから脂肪性」とも言い切れません。
高濃度乳腺 (デンスブレスト)には自覚症状がある?
質問者
じゃあデンスブレストのサインとか何か自覚症状って言うのはあるの?痛みとか。
先生
何か症状が出ることはありませんし、乳房の痛みとデンスブレストも関係ありません。
質問者
でも巨乳だったり乳房がやわらかかったりしたら脂肪に富んでいるってことじゃないの?
先生
そうとも言い切れません。授乳中だと乳房は大きいけど乳腺密度が高いですし。大きさやかたさで一概に評価できません。デンスブレストの人が気をつけるべきことは、毎月のセルフチェックをきちんと行うことと定期的に乳がん検診を受けることです。
セルフチェックで、しこりや乳頭の陥没、皮膚のひきつれなどが見られた場合は早急に検査してもらいましょう。
乳がんのセルフチェックに関してはこちらの記事をご覧ください。
高濃度乳腺 (デンスブレスト)かどうかを判断する方法は?
質問者
アメリカの多くの州ではマンモグラフィ検査の結果デンスブレストだったら、告知の義務があるって話だったけど、日本でも知らせる義務があるの?私も記載されていたし。
先生
日本では義務化されていません。告知するかどうかは医師の判断に任されています。余計な心配をかけたくないと考える医師もいますしね。というのも、デンスブレストが乳がんのリスクを上げる理由がよく分かっていないこと、また乳がん発症率の高いアメリカより日本人女性の方がデンスブレストの割合が多いって矛盾も指摘されていて。これについては、今も研究が進められています。
質問者
確かにそうだね。でも自分がデンスブレストかどうかはマンモグラフィでしか分からないんだよね?
先生
そうですね。そのため、どうしても知りたい場合は事前に医療機関に相談すると良いです。
高濃度・不均一高濃度乳腺 (デンスブレスト) と診断されたら乳腺エコーの受診を
質問者
自覚症状が無くて、マンモグラフィで乳がんが発見されにくいのがデンスブレストなんだよね……それなのに乳がんの発症リスクが上がるなんて。一体どうしたらいいの?
先生
そこまで悲観的にならないでください!「デンスブレストの女性=乳がんを発症する」わけではないので。脂肪性乳腺でも乳がんにかかるし。何度も言うけど、大切なのはセルフチェックと定期検診です。
ただ、デンスブレストの女性は、マンモグラフィで乳がんを見落としてしまうことがあるので乳がん検診では乳腺エコーを併せて受けることをおすすめします。
乳腺エコーは乳腺密度の影響を受けません。また、マンモグラフィのような被ばくも無ければ乳房を圧迫されることによる痛みもありません。
質問者
それなら乳腺エコー検査だけじゃダメ?
先生
それぞれ長所・短所があって、乳腺エコーでは小さな石灰化を伴う乳がんを見つけることが難しいです。だから乳がん検出の感度を上げる(見落としを減らす)ためにも両方受けることをおすすめします。
マンモグラフィ検査と乳腺エコー検査についてはそれぞれ詳しく解説しているから、是非参考にしてください。
まとめ、乳がん早期発見のためにできること
それではこの記事をまとめましょう。
- 乳房内の組織構成タイプは乳腺密度の低い順に「脂肪性乳腺」「乳腺散在」「不均一高濃度乳腺」「高濃度乳腺」の4つのタイプに分けられる
- 乳腺密度の高い「不均一高濃度乳腺」と「高濃度乳腺(極めて高濃度)」をデンスブレストと呼ぶ
- マンモグラフィ検査においてデンスブレストの場合、乳がん検出の精度感度が落ちる(がんが見つかりにくい)
- デンスブレストの女性はそうでない人と比べると、乳がんの発症率が若干高いと言われているがその理由はよく分かっていない
- 日本人女性は欧米人と比べてデンスブレストの割合が高い
- デンスブレストは自覚症状が無く病気でもない、また改善することもできない。ただ、加齢と共に乳腺組織が脂肪組織へと次第に置き換わる
- デンスブレストと伝えられた場合はできるだけ乳がんを見逃さないように、乳がんの検出精度を上げるため乳腺エコーも併せて受けることがすすめられる
乳がんは日本人女性の9人に1人がかかる(*3)という決して他人事とは言えない病気です。乳がんは女性がかかるがんの中で1番多く、2019年の罹患数(新たに乳がんと診断された人の数)は97,142人、2021年の死亡者数は14,803人です。(*3)
質問者
乳がんは身近な病気だよね。マンモグラフィの結果、デンスブレストって記載があったとき、乳がんなのかと思ってすごく怖かったんだけど、今日の話が聞けてよかった!でも普通の人よりは乳がんになる可能性が高いってことだから気をつけないといけないよね!
先生
そうですね。毎月のセルフチェックと定期的にマンモグラフィーと乳腺エコーを受けて早期発見できるようにすれば大丈夫です。もしも、定期的に医療機関に足を運ぶのが面倒って場合はマイシグナル®という新しい検査がおすすめです。自宅で尿を採取するだけで、乳がん検査ができます。
質問者
えっ?そんな方法あるの?病院って緊張するし、上半身裸になるのも恥ずかしいし、尿検査で済むなら試してみたい!
マイシグナル®についてはこちらのマイクロRNAとは?がん検査との関係とマイシグナル®の仕組みにて詳しく解説しているので是非ご覧ください。
*3
- 参照: がん情報サービス「最新がん統計」
- ※本記事に記載されている費用は当社(Craif)が独自で調べたものになります。実際の費用は各医療機関にお問い合わせください。
この記事の著者
太田知見
医学修士・薬剤師・メディカルライター
神戸大学医学研究科を卒業後、大手化粧品会社の研究開発部に勤務。その後、臨床薬剤師の経験を積み海外へ移住。現在はメディカルライターとして製薬会社やバイオベンチャー企業のライティング業に従事している。
この記事の監修者
宗田聡
医学博士・産業医・茨城県立医療大学客員教授・東京慈恵会医科大学講師(非常勤)
筑波大学産婦人科講師を経て、米国ボストンのNew England Medica Center(NEMC)に留学し出生前診断(遺伝子関連)の研究やWomen’s Healthに関わる。産婦人科専門医・臨床遺伝専門医。日本周産期メンタルヘルス学会評議員、東京産科婦人科学会評議員、産科医療補償制度原因分析委員会委員など
質問者
先日受けた乳がん検診でマンモグラフィの結果が返ってきたんだけど、「高濃度乳腺」って書かれていて。これっていずれ乳がんを発症する可能性があるってこと?なんか不安で。