活用事例
父と社員をがんで亡くした経営者の決断。尿がん検査を活用した健康経営で売上1,000億を目指す【株式会社永賢組】
- 公開日: 5/30/2025
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- 最終更新日: 5/30/2025

(左から、Craif 商品開発 荒井、Craif 法人部門責任者 豊田、永賢組 代表取締役 永草 孝憲氏)
株式会社永賢組
所在地:愛知県春日井市
業種: 建築事業・土木事業・不動産事業
従業員数:113名(グループ会社含め244名)
導入検査:マイシグナル・スキャン
株式会社永賢組は、“地域の問題解決精神”のもと、1955年に創業。公共施設や商業施設、住宅などの新築工事、耐震補強、リノベーション工事を手がけるほか、道路・上下水道といったインフラ整備工事、災害復旧工事などの土木事業も展開しています。
同社では、先代社長や社員をがんで亡くされたことをきっかけに健康経営を実践。早期発見の手立てとして、すい臓がんもステージ1から検知できる尿がん検査マイシグナルを、グループ会社も含めた全従業員に対して全額負担で導入しました。
今回は、株式会社永賢組の代表取締役の永草 孝憲氏に、健康経営を通して社員にかける想いや、マイシグナル導入の背景についてお話を伺いました。


目次
社長であった父をすい臓がんで突然亡くした強烈な原体験
荒井:私たちCraifは「天寿を全うする社会の実現」をビジョンに掲げ、そのためのツールとしてマイシグナルを提供しています。御社が健康経営に取り組み、マイシグナルの導入に至った背景として、永草様ががんを身近に感じられた瞬間があったと伺いました。その経緯を教えていただけますか。
永草社長:最初のきっかけは、私が30歳の時に先代社長であった父がすい臓がんで亡くなったことです。子どもの頃から父は家業と家族のために働き続け、私も25歳で会社に入り一緒に働いていました。
ある時、父が突然「胃が痛い」と言い出しました。でも、昔の人なので「自分は大丈夫だ」と病院に行かず放っておいたんです。いよいよ耐えられない痛みになり検査したところ、すい臓がんだと分かりました。当時父は61歳で、社長としてはまだこれからという時期でした。
がんが発覚した父に代わり、私は営業や接待をこなしていました。ある席で、私を心配した父が胃を押さえながらもやってきて皆を和ませてくれたのですが、その帰りに倒れました。後で知ったのですが、その時にはすい臓がんのステージ4だったようです。
社員も、お客様も非常に困惑をしたことを、昨日のことのように思い出します。私自身も、29歳で急に社長を継ぐことになり、会社の状況も良くなかった中での不安と恐怖はとても大きかったです。
荒井:がんは突然やって来ると実感されたご経験だったと思います。特に、痛みが出るまで気づきにくいのがすい臓がんの怖さでもありますね。
永草社長:定期的に検査しておけば、予防できたことがあったはずです。同じ想いを社員にさせたくない、それが今回の取り組みにつながっています。
誰にも同じ想いをさせたくないという想いから健康経営へシフト
荒井:お父様の件がきっかけで会社として健康経営に踏み出されたということですが、マイシグナル以外にも行っている取り組みはありますか。
永草社長:人間ドックと脳ドック、それから腫瘍マーカー検査を会社負担で全社員に実施しています。マイシグナルに出会って、“もっと前段階”で異変を察知する必要性を感じました。
荒井:そこまで実現するのはなかなか難しいと思うのですが、その費用をコストと捉えるのではなく、会社の成長とそのための社員の健康に対して「投資する」という考え方なのでしょうか。
永草社長: 私は投資というより「必要経費」だと考えています。社員一人が亡くなることで受けるご家族の辛さやお客様へのインパクトは計り知れません。その損失を思えば、検査費用は最低限の経費です。

豊田:会社としてウェルビーイングも掲げられています。その背景を教えていただけますか。
永草社長: 目標を共に達成して喜び合うには、社員が健康でなければ意味ない。それが原点です。スポーツでも上に行くほどバックアップ体制が整っています。企業も同様で、社員が最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えるのは経営者の責務だと考えています。
がんと闘い続けた社員から学んだ、会社が社員の健康に責任を持つ意義
荒井:会社の急成長を支えた社員の方が、がんで亡くなられたと伺いました。
永草社長:はい。その社員は、私が「会社を10倍にする」という目標を掲げて3〜4年目の頃に面接を受けに来てくれた方でした。当時売上はまだ17億円ほどで、「10倍なんて無理でしょう」といいながらも、職人気質だった彼は誰よりも熱心に働き、会社の成長を支えてくれました。ところが、ようやく売上100億円規模が見えてきた矢先、がんが見つかり入院生活を余儀なくされました。
余命1年と宣告された中でも、本人は「会社が10倍、100億円になるまでは死ねない」と言い、病院内でも名刺を配って営業し、作業員を見かけては「うちに来ないか」と声を掛けるなど、病室でも活動を続けてくれました。
もしもっと早くマイシグナルを受け、がんを早期に知ることができていれば――と今でも悔しく思います。お客様も「彼はどうしている? 会いに行きたい」と心配してくださるほど愛される存在で、彼を失ったことによる会社と私自身の喪失感は非常に大きいものでした。
社員一人を失う悲しみと、全社員に検査を実施する費用を比べれば、費用の問題など取るに足りません。むしろ予防のために積極的に取り組むべきだと、改めて強く感じています。
荒井:非常に残念なできごとだったと思いますが、それをきっかけにして会社全体で立ち上がり、予防も含めた対策を行っていることは、本当に素晴らしいですね。
がんを自分事として捉えている人は多くなく、対策を個人に委ねるのは難しい部分があります。会社として社員の健康管理に責任を持つという意識で進められているのでしょうか。
永草社長: そうですね。つい最近、人間ドックでがんが早期ステージで見つかり、手術をした社員がいました。早く分かったことで助かったというケースになると思います。そういうこともあって、会社全体で社員を「資産」と見て、その資産を守ることが当然だと考えています。

豊田:社員本人としても早期で見つけられれば早期復帰にもつながり、会社のエンゲージメントにもより寄与するというイメージはありますか。
永草社長:そうですね。私たちは建設業なので、社員が一人病気になるだけでもインパクトは非常に大きいんです。例えば、その社員が担当していたメンテナンスや建設案件を、急きょ別の担当者に引き継がなければならない。お客さまからしてもその状況に不安や不便を覚えることになります。つまり、社員一人を守ることは、その先にいるお客さまを守ることにも直結しますし、結果として会社全体を守ることにもつながると考えています。
会社が健康状態を見てくれることで社員は安心してサービス提供に集中できますし、ご家族からも親近感を持ってもらえるようになりました。
すい臓がんの早期発見ができることを知りマイシグナルの導入を即決
荒井: 永草社長のそうした意思のもとご一緒できて嬉しい限りです。
永草社長:偶然なんですが、社員が亡くなって葬儀を終えた翌日に豊田さんと出会い、マイシグナルのことを知りました。タイミングにご縁を感じましたね。
荒井:豊田さんはすい臓がんプロジェクトでご一緒されたんですよね。
豊田:はい。中部エリアで医療機関と連携しすい臓がんの啓発を進める中で、ある経済会でプレゼンの機会をいただきました。そこに永草社長がいらっしゃってご挨拶したんです。
永草社長:すい臓がんは見つかったと同時に亡くなるものだと思っていたので、予防できる(早期発見・早期治療ができれば生存率が高くなる)と聞いて、「すぐに取り入れたい」と翌日には担当から連絡させていただきました。
荒井:すごいスピード感ですね。尿でがんリスクを検査するのは新しい概念ですが、導入を伝えたとき、社員の皆様の反応はいかがでしたか。
永草社長:「全員やるんですか」と驚いた人もいましたが、否定的な声はありませんでした。「家族にも受けてほしい」という声が多く、期待されていると感じています。社員の家族までカバーできる規模と実力を付けたいですね。

豊田:企業では、まだ役員向けの検診オプションとして導入されるケースが多いのが実情です。そんな中で永草社長が「自分だけ受けても意味がない」とおっしゃった。その腹の据わり方が本当に素晴らしいと感じました。
ウェルビーイングとして、他の会社にも広めたい
荒井:豊田さんが普段法人様への導入を進める中で感じる導入ハードルやメリットはどのようなものがありますか?
豊田: マイシグナルは個人でも購入できますが、個人で毎年利用するのは金額面でハードルを感じる方もいます。その点、法人で導入してもらえれば、企業補助が出る分、よりリーズナブルに利用できる点がメリットだと思います。また定年が延び従業員の有病リスクは高まっていますが、忙しかったり病院嫌いだったりする方もいる中で、がん検診受診率は4割程度に留まっています。企業としても、簡単に高精度の検査が受けられる点で個々の健康意識を変えるきっかけに繋がるのは良い点だと思います。
永草社長:ウェルビーイングは社長だけでなく、社員が物心両面で幸福になる姿を見て経営者が幸せを感じるものです。健康はその基盤。病気になると自己実現もできません。父が弱っていく姿を見続けた経験が焼き付いています。
マイシグナルのような検査を受けることも、福利厚生という感覚ではなく、当たり前のことになっていくように、継続していきたいです。
豊田:私たちも全力で取り組みます。

永草社長:社員を守る経営をしても会社は成長できます。その姿を後輩の建設会社に示し、同じ取り組みを広げたいと考えています。
豊田:どの会社様も忙しくされてはいますが、建設業のように現場があったり、メーカーや工場勤務など丸一日開けることが難しいという場合だと、自分の健康を後回しにしてしまい、がんを早期発見できなかったというケースがあり、検査のニーズも高いと感じています。
荒井:経営者同士でも健康の話題は多いですか。
永草社長:50~60代の経営者はやっぱり自身の健康や次世代のことを気にしています。大切な友人たちにもまずは「やってみよう」という気持ちで受けてほしいですね。時間が経つと実施しなくなるので、決めたらすぐ動くことが大切だと思います。
荒井:がん検診も結果を見た直後は不安でも、しばらくすると忘れがちです。波が高まった瞬間にいかに行動できるかが大事ですね。

今後は自己実現できる会社として、売上1,000億を目指す
荒井:売上100億円の次の目標はありますか?
永草社長:はい。父と交わした約束が「売上100億円を達成する」ことでした。社員の力で今期その目標を達成できる見込みです。ここから先は、社員一人ひとりが自己実現できる会社にすることが第一の目標です。
具体的には、「ウェルビーイング」を掲げ、各自がやりたいことを会社という器で実現できるようにする。そのうえで健康管理をしっかり行い、全員が高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えます。
その結果として、現在の10倍である売上1,000億円規模を目指します。マイシグナルをはじめとする健康投資は継続しながら、会社も社員も共に発展していきたいと考えています。
荒井:売上だけでなく社員と家族の幸せを重視されているのが素晴らしいです。
豊田:外部からはどのような会社として見られたいですか。
永草社長:建設を軸に地域インフラを整えつつ、後継者不足の会社を引き継ぎ、若い経営者を育成して日本全体を元気にしたいです。
1,000億円を目指すと「社員が疲れるのでは」と思われがちですが、会社を10倍にしても皆が幸せで健康というモデルを示したいです。若い建設業の模範になりたいですね。
荒井:採用面で、御社に入る社員の皆様に期待することは何でしょうか。
永草社長:来ていただく方には、自分の強みや得意なことを積極的にアピールしてほしいですね。「これがしたい」「こうなりたい」という思いをたくさん聞かせていただきたい。
社員には、挑戦し続けてもらいたいですね。失敗も経験のうちです。私自身も格闘技の選手から建設業界に入り、未経験のまま社長になりましたが、最初の一歩を踏み出せば、挑戦したことが必ず経験になります。恐れずに早く挑戦してほしいと思います。
荒井:本当に意志を持った方に集まっていただきたいということですね。
永草社長:当社は個性的な人が多いです。1 つのカラーに収まるのではなく、さまざまなカラーの人が集まって成り立っています。同じ色でそろえるよりも、多彩な色の集合体であるほうが私たちの会社らしいと考えています。

豊田:建設業だと採用できなくて人手不足だと聞くことも多いですが、永賢組さんの場合はどうですか。
永草社長:特徴的なのは、紹介採用が多いことですね。若い現場監督が友人を連れて来るケースや、元同僚を紹介してくれるケースが頻繁にあります。社員のご家族が入社してくれることもあり、こうした紹介採用は当社の大きな強みになっています。
創業当初からの「地元と共に」という文化を現代版にアップデートできていると思います。
荒井:最後に、社員とマイシグナルへのメッセージをお願いします。
永草社長:目標は一人では達成できません。共に進む仲間を守り、健康な状態でお互いの夢や目標を実現する。そのために健康管理と報酬を充実させます。Craifさんとは今後も長くお付き合いしたいと思います。

荒井:本日は貴重なお話をありがとうございました。いただいたフィードバックをもとにサービスを改善し、挑戦のサポートを続けてまいります。
- ※マイシグナルシリーズは医療機器ではありません。解析した情報を統計的に計算することによりリスクを判定するものであり、医療行為としてがんに罹患しているかどうかの「診断」に代わるものではなく、リスクが低いと判定された場合でもがんが無いまたは将来がんにかからないとは限りません。
この記事の監修者

水沼 未雅
博士(薬学)、薬剤師
京都大学薬学部卒業。東京大学大学院 薬学系研究科にて博士号(薬学)取得。アストラゼネカ株式会社のメディカルアフェアーズ部門にて、新製品の上市準備、メディカル戦略策定、研究企画、学術コミュニケーション等を経験後、Craifにて事業開発に従事。